平穏な生活を脅かす、悪質商法。手口の
巧妙化で高齢者・子供にも被害が拡大
普段身に覚えのない請求、身に覚えのない大金を要求される…。悪質商法の被害が増えている。その手口は消えることはなく、毎回、手口を変えて社会に「ワナ」として潜んでいる。
しかも、その被害は幅を広げ、高齢者や子どもにまで及んでいる。悪質商法は、あなたを狙っている…。
悪質商法の被害が急増している
2005年の悪質商法に関する高齢者の被害相談献金数は、138、526件。(消費生活センター)年々増加している。(2004年は129,383件)法律が改正されても、被害は減るどころか増えているのだ。特に、クレジットを利用して、高齢者をねらった「次々販売」が増えている。
ある「次々販売」被害者の例を紹介しよう。
数年前に妻を亡くし、広い家に一人で暮らす山口哲郎さん(仮名・65歳)。そこに悪質商法の魔の手が。
ある日、自宅に「羽毛布団の訪問販売をしている」という業者の訪問を受けた。最初は購入を断っていたが、業者はこうした一人暮らしの孤独感につけこみ、話し相手になることで不信感を無くしていく。そして、優しい言葉をかけて最終的には商品を買わせてしまう。被害者の中には、販売員の親切さだけを覚えていて「騙された」感覚が無い人もいるという。
しかし「次々販売」の恐ろしさは、この後に出てくる。
一度商品を買ってしまうと、販売員が何度も訪問する。そして、次々に違う商品を購入させるのだ。中には2000万円もの契約をした被害者もいる。
次々販売は、同じ業者が何度も商品を販売することが多いが、中には情報が漏れるのか、違う業者が次々に訪問するケースもあるという。
激増する、悪質商法。若者をねらう「マルチ商法」の実態とは
若者の間では「マルチ商法」の被害が多い。「商品が売れるとマージンが入る」、「おいしいよ」等と説明を受ける。多くは、友人・先輩から勧誘されるという。
携帯で呼び出され、「あなたなら、仕事のパートナーになれる」等と言われ、マルチ商法に誘われるケースもある。
多くの場合、マルチ商法では「会員費」と「商品購入費」がかかり、数十万円の高額な価格になる。当然、若者にこの金額が払えるわけはなく、大部分がクレジット契約を締結する。この時「すぐに取り戻せるよ」、「お金を借りても大丈夫だ」等と説明されることも多いという。
そして、多くの場合は新しい会員の獲得や商品の販売はできず、借金だけが残る。
一方、こうした勧誘が成功すれば、今度は自分が加害者になる、という構造も問題視されている。
親心を踏みにじる悪質・家庭教師業者の対応とは
当番組では、悪質商法の被害者(山下順子さん・仮名)に話を聞くことができた。
山下さんは子供に英会話を習わせようと思い、家庭教師を頼むことにした。
しかし、最初の授業の日。直前に業者から電話があり、授業をキャンセルされてしまったのだ。そして、それは1日だけではなく、授業の当日になると、授業の30分から1時間前にキャンセルのメールがくる、という。
結局、4回も直前にキャンセルされてしまった。この件で山下さんは、英会話教室にクレームの電話をしたところ、業者はAさんに対し「このような電話をすることは、ストーカー行為と営業妨害にあたる」、「これ以上しつこい場合は警察に相談するので、ご注意ください」、というメールが来たという。
「子どものために、と思って出したお金なのに…」、「一番許せないです」と山下さんは怒りを抑えられない様子だった。
高齢者、若者、主婦だけではない。急増している「子ども」を狙った悪質商法
子供を狙った悪質商法で目立つのが携帯電話による被害だ。
被害例を紹介しよう。都内に住む田中家は拓くん(仮名)を含む3人家族だ。今は、小学生でも携帯を持つのは当たり前。しかし、そこにワナがあった…。子どもを狙う悪質商法の魔の手とは。それは、社会問題にもなっている携帯電話へのダイレクトメール。大人であれば、未然に防げるが、子どもは何もわからず押してしまう。その後、業者から電話がかかってきて、「ご登録ありがとうございます。“登録料”として、1万円がかかりますので」などと請求されてしまう。
さらに、このような業者から電話があった場合、相手に言われるままに名前や住所等の個人情報を話してしまうのが、さらに被害を大きくする可能性を生んでしまう。
急増する悪質商法から身を守る方法を、消費者問題のエキスパートに聞いた
こうした悪質商法に対して、どんな対策をすれば良いのか?どうやって、身を守っていけばいいのか?を、消費者問題に詳しいエクステージ総合法務事務所代表・水口結貴行政書士に話を聞いた。
「何か“納得がいかないな”、“おかしいな”と思ったら、絶対にサイン・印鑑を押さないこと」と水口結貴行政書士は言う。それは、消費者も「サインをする」、「印鑑を押す」という行為が、どんなに重要なことなのか」ということを再確認する必要がある、ということだ。また、契約内容に納得いかない場合は、「断る」、「その場から帰る」ということも大切だ、ということだ。
こうした社会的弱者とも言える、高齢者や子どもを狙った悪質商法には、周囲が気を付けることと同時に、何かあった場合はすぐに専門家に相談するようにしたいものだ。