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免許証も偽造可能!国勢調査票の持ち去りなど、トラブル急増

国が5年に一度、行う国勢調査。今、その現場でトラブルが相次いでいる。何故なのか?
実は、この書類によって、運転免許証や保険証といった身分証明書が偽造できるという。そのため、国勢調査票が高値で売買されるのだ。

あなたの証明書がもし、知らない間に売買されているとしたら?

調査票回収の現場を取材してみた。
東京都新宿区では、ニセの調査員が調査票を持ち去るという事件が起き、中野区では調査票をだまし取ろうとする未遂事件が発生。新聞によれば、国勢調査をめぐるトラブルは366件にも上った。そのうち、約半数はニセ調査員による調査票の持ち去りやだまし取りだ。「個人情報が金になる」時代。
しかし、国勢調査を管轄する総務省も、その盗まれ方には驚いている。それは、ある件や地域に被害が集中しているのではなく、全国的に被害が「パラパラと」出ている事だ。

国勢調査とは
国勢調査は、1920年(大正9年)に第1回が行われ、5年ごとに実施されている。
調査対象は、日本に住んでいる全ての人、人口、世帯数、職業を地域別に把握し、政策に役立てるのが目的。1回の調査でまとめられる統計は、350冊以上になる。
例えば、地方交付税の配分や地方議会の議員定数も国勢調査の結果が基になる。調査票の提出は法律(統計法)で義務と定められている。そのため、回収率も2000年調査では98%以上にのぼる。

一方、住民側の意識にも異変が起きている。回収が進まないことにいらだった調査員が調査票を焼却するというトラブルも発生。この調査員は「住民が調査に協力してくれない」、「アパートなんかやっていられない。全部燃やしていいか?」と言っていたという。
新宿を担当した調査員は、住民から「ニセ者が多い。調査員証以外に証明できるものは?」と聞かれたそうだ。あるアンケートでは、勤務先に関する記入について、約4割が「不安」と回答した。

個人情報売買の経験者が語る、国勢調査票のさらなる「魅力」

例えば、国勢調査票があれば、次のようなことがわかり、そこから「この人にピッタリの詐欺・悪徳商法」を考え出すことができる、と言う。
○住宅の建て方・延床面積
…これで、いくら位の年収か推測できる。それに応じてリフォーム詐欺ができる。

○「何日間仕事をしましたか?」という質問
…仕事が少ない人がいたら、例えば、内職詐欺ができるし、あまり仕事をしておらず、お金に困っていそうなら「保証金を払えば、こういう仕事がある」と例えば、パソコンを売りつけるなど
この売買経験者は、調査票のことをはっきりと「僕らにとって、お金だよね」と言った。
消費者問題の専門家に聞いた
手間をかけて1枚の調査票を盗む理由、狙いは何か?

長年、悪質商法問題に取り組んできた専門家、エクステージ総合法務事務所・代表行政書士の水口結貴さんに、悪質業者が国政調査票を欲しがる理由を聞いた。

すると、国政調査票があれば驚く多くのことが読み取れることがわかった。
そのほか、国勢調査の調査票が入手できれば、他人に自分の身分証明書を取得される可能性があるいう。国勢調査票と、原則閲覧自由の住民基本台帳。この2つの情報を使うことで、他人でも身分証明書を取得することができる。

それは、「住民票」だ。カギになるのは、国勢調査票に記載される「世帯主との続き柄」。より細かい家族構成や勤務先がわかれば、「嘘にもリアリティが出てくる」と、水口結貴さんは指摘する。まさに「国勢調査票は情報の宝庫」なのだ。
例えば、自分がなりすます人物は夫なのか、兄なのか?それを知ることで、不正に住民票を取得する際のリスクを減らすことが可能になる。さらに、住民票をきっかけにして、運転免許証、保険証、印鑑証明証といった、身分を証明する公的な書類が不正に作られてしまうという。
このような、本人が知らない間に作られる公的証明書は、闇の市場では高値で取引されている。労力をかけて騙し取られる国勢調査票には、それに見合う価値が秘められていた。