「美しくありたい」と願う女性の思いを利用する悪質美容商法
ある被害女性の話を聞くことができた。
彼女は、友人から「キレイになって儲かる仕事があるからやらない?」と声をかけられ、その数日後には、業者のスタッフという夫婦が訪問してきたと言う。
夫婦は、超音波美顔器を出し「まず、この美顔器を買って、うちの会員になって」、その後「色々な人にその効果を伝えて欲しい」と言った。勧めてきた女性がとても綺麗な人だったこと、その女性から「私も始めて1ヶ月位でとてもキレイになった」と言われたことで信用してしまった。
そして、話は美顔器から「もうけ話」へと移っていく。
「色々な人に、この美顔器の話をして、その人が美顔器を買ってくれれば、あなたに1万円が入る」・「しかも、会社のチラシ配りを手伝ってくれれば、もう1万円が入る」と。
ちょっと宣伝するだけで、お金を振り込んでくれる…、しかもノルマもないし…と被害女性は気持ちが動いてしまった。
商品の支払・ローンの話は後で話し、計画的に倒産して逃げる会社も
しかし、彼女の話はこれで終わりではなかった。彼女は続けて「ローンの支払は月々、1万円だから、1ヶ月に一人紹介すれば美顔器はタダ同然なの」と。これが決定打になり、被害女性は「タダでキレイになれて、さらに副収入も得られる」と、被害女性は美顔器を購入し会員になった。契約金は57万円という高額なもの。
その後、被害女性は、夫にも協力してもらい、夜な夜なチラシ配りをがんばった。1万数千円の報酬も振り込まれ、ローンの引落にも間に合ったと言う。しかし、振込はたったの1度だけ。2回目から、振込は無くなった。不審に思った被害女性は、業者に電話をするが電話は繋がらなかった。さらに、実際に会社を見に行った所、会社自体が無かった・モヌケのカラだったと言うのだ。なんと、美顔器を売っていた会社は倒産していた。被害女性は怒りをぶつける場も無く、残ったのは50万円を超えるローンだけ。
消費者問題に詳しい法律家に聞く、被害を最小限に食い止める方法とは
消費者問題の専門家、エクステージ総合法務事務所・代表行政書士 水口結貴先生に今回の件について、アドバイスをしてもらった。
今回の場合は、業者が倒産して無くなってしまっているので、現実的に契約解除や返金等の交渉をする相手がもういない状態になっている。
しかし、美顔器などの商品を、ローンやクレジットを組んで買っている場合や信販会社を利用している場合には、信販会社と交渉することで、支払済のお金について返金は諦める代わりに今後の支払に関しては免除してもらう、という形で和解するということも可能だ、と教えてくれた。
商品の一部(外箱等)が無くても、クーリングオフは可能
諦めず、期限内に行動を
このような会員商法の他に、訪問販売で高額な化粧品を「たったの○千円ですから!」と、ローン契約で安く手に入る物であるかのような販売トークも問題になっている。これで、買う側は高額金額から目をそらされ、「生活費の中から何とかなるかも…」と思わされてしまうのだ。そして、ローン契約書を書く時になって始めて、数十万円を超える高額商品である事に気付くが、その時はすでに断れる状況にはない。
さらに、クーリングオフを妨害するため、販売員が外箱を持ち帰る等も問題視されている。ある被害女性は、20万円弱の高額化粧品を訪問販売で購入、後日、クーリングオフを考えたが、外箱を販売員が持ち帰っていたため「クーリングオフはできない」と重い込み、クーリングオフをしなかった。
しかし、悪質商法に詳しい行政書士・水口貴結は、「業者が持ち帰っているので、そのような付属品が無くても、クーリングオフは問題なくできる」と教えてくれた。クーリングオフは、消費者の側から一方的に契約を無条件解約できる権利であって、クーリングオフを行うのに、理由はいらないと説明する。さらに、クーリングオフは業者側に同意してもらう必要も無いし、1円でもお金を払っていれば全額、お金も戻ってくる。クーリングオフは消費者の強い見方だが、正しい知識が無いと思わぬ落とし穴もある。
いくつか、例を見てみよう。
□訪問販売で買った化粧品の蓋を開けてしまった場合、クーリングオフはできるのか?
↓
×(クーリングオフはできない)
理由…化粧品は、クーリングオフを規定する「特定商取引法」では「指定消耗品」にあたり、蓋を開けてしまうとクーリングオフはできなくなる。
□訪問販売で買った化粧品の「外箱の封」を開けてしまった場合、クーリングオフはできるのか?
↓
○(クーリングオフできる)
理由…化粧品本体の蓋を開けていないので、化粧品本体については、クーリングオフできる。場合によっては、外箱代を請求されるかもしれない。
□訪問販売で買った鍋で料理をした場合、クーリングオフはできるのか?
↓
○(クーリングオフできる)
理由…鍋は、「消耗品」ではなく「耐久消費材」のため、使用した場合でもクーリングオフはできる。
□訪問販売で買った鍋を焦がした場合、クーリングオフはできるのか?
○(クーリングオフできる)
理由…鍋は、「消耗品」ではないため、たとえ焦がした場合でもクーリングオフはできる。
□訪問販売で買った布団を使用した場合、クーリングオフはできるのか?
○(クーリングオフできる)
理由…布団は、「消耗品」では「耐久消費材」のため、使用した場合でもクーリングオフはできる。