急増する「資格」ビジネス
街で「資格をもっていますか?」と尋ねると、多くの人が何かしらの資格を持っていた。
就職やキャリアアップ、また趣味を極めるものとして人気の資格。その数は年々増加し、今ではなんと3,000種類にも昇る。
今女性に人気なのが「野菜ソムリエ」受講料は安くないが、資格取得者が2万人を超えるなど、毎月数百名が受けるなど盛況ぶりが続いている。
野菜ソムリエの人気の背景には、協力会社が活躍の場を提供するなど資格の価値を高めている。資格を作る場合は、「理念」だけではだめではやはり「実用」が伴っていないと広がっていかない。
国家資格と民間資格。2つの資格の存在理由は?
資格には、医師や行政書士などの国家資格と簿記検定やTOEIC等の民間資格がある。民間資格は、届け出さえすれば誰でもいわば「勝手に」作ることができる。中には似たような資格で、国家資格と民間資格が混在しているものもある。
例えば、ファイナンシャルプランナーであれば、国家資格の「2級FP技能士」の資格と民間資格の「AFP」は、試験が共通。民間資格上級の「CFP」に合格すれば、国家資格の「1級FP技能士」の学科試験は免除される。
2つ資格が存在する必要があるのか、聞いてみた。
厚生労働省によれば、AFP、CFPについてはあくまでも民間のもの。国が技能検定をしているので「民間資格はやってくれるな」ということではなく、紛らわしいものになっていたら、違いがわかるように説明してください、という指導にしている、という。
民間資格を維持にするには会費(お金)が必要だ。
「“管理調理師”は公的な資格ではありません」
数ある資格の中には、自治体が注意を呼び掛けているものもある。その1つが「管理調理師」だ。
調理師は国家資格だが、管理調理師は民間資格。しかし業者が作成した案内DVDでは「栄養士に管理栄養士、薬剤師に管理薬剤師。様々な資格が定められています」等と、他の資格名をたくさん引き合いに出して、“管理栄養士”があたかも国家資格であるかような説明がされていた。
調理師法第8条では「調理師でなければ、調理師またはこれに紛らわしい名称を用いてはならない」としている。このようなDVDは抵触する恐れがある。
悪質商法問題に詳しく、消費者保護にずっと携わってきた行政書士エクステージ総合法務事務の水口結貴行政書士に聞いた。
水口結貴行政書士によれば、このような紛らわしい資格名は国家資格と似た名前の場合が多い、という。さらに団体名についても「●●協会」、「●●振興会」など、さも公共団体であるかのような名称を使って、信頼性を高めて消費者を勘違いさせている、と教えてくれた。
資格の発行団体の住所地(大阪市内)を訪ねてみた。
しかし出てきた住人は「うちは全く関係ない」という。記載された住所に事務所は存在しなかった。
そこで、企画の発行団体に電話をしてみると「資格ではなく認定講座だから、認定書を受けた方はいる」との回答。受けた人の人数を聞いたが、教えてくれなかった。続けて、県が「調理師法と抵触する」と注意喚起をしている、と告げると「そんなことは知っている」と言い、続けて「これが法に触れるなら、商標登録もできないはずでしょう」、「こちらは、印刷物にも記入して“やってもいい”ということになっている」と言い張った。
「現在、関係ない住所を名乗っているが…」と言うと、相手は突然「関係ないことはない!」と激高した。
そんな中、資格を強化する第三者機関が名乗りを上げた。それは「資格標準化機構」だ。各種検定試験や資格試験の評価を行うとうたっているが…。
代表理事はなんと、問題となった「漢検」の大久保 昇理事長。実は、この法人は大久保理事長の肝いりで作られ、漢検協会から2億円が出資されているのだ。問題を指摘された団体の理事長が他の資格を審査することが適切なのか?
取材を申し込んだところ「文書でなら」と回答が寄せられた。それによれば、活動は当初予定通りに進める、役員人事についてコメントは差し控えたい、ということだった。
もちろん、民間資格の中にもちゃんとやっている所は多くある。一方、「就職や仕事に有利になる」とうたっておきながら、実際には全く役に立たない、というものをある。
「肩書き社会」の中、名称独占、業務独占の資格以外は、どんな資格も「何となく」人の弱みにつけこむ所がある。また、日本人は知的好奇心が高いので、そこを擽られるのだろう。資格を発行する側も、「●●協会」などと名乗っているのであれば、資格を発行することで、その人の人生が輝くものになるように、考えてもらいたい。