悪質商法に「クーリングオフ制度」
「自分に限って大丈夫」-そんな思い込みを後目に悪質商法被害が拡大している。消費者にはどんな防衛手段があるのか。言葉は知っていても、実際にどんな制度なのか知らないといざというとき、役立たない。「クーリングオフ」について解説する。
会社員も被害増
福岡県の戸村順さん(仮名・35)は職場にかかってくる執拗な電話に悩まされていた。「持っていれば、将来役立つ」とのセールストークを信じて資格取得教材を購入したのが2年前。仕事との両立は難しく、勉強ははかどらなかった。ところが業者は「一度登録したら、合格するまで教材を購入する仕組みだ」と説明する。「おかしい」と思いつつ、職場への電話を止めてもらいたい一心で「続き」と言われた商品を50万円で購入した。しかし、電話はやむことは無かった。それどころか名簿が流出したのか、別の業者からも電話が次々にかかってくる…。
これは「資格商法」と呼ばれる悪質商法の一種だ。国家資格の受験教材を売りつけ、その後も「契約は終了していない」などと再三、接触してくるのが特徴だ。談は約128万件。1995年度の約27万件から5倍近くに増えた。そのうち8割以上が「契約・解約」に関する相談だ。インターネットの普及で、どこにいても悪質商法のターゲットにならないとも限らない。
素早い対応が被害を防ぐ
本意でない契約をしてしまった時の強い味方がクーリングオフ。通常、契約の一方亭な破棄は認められないが、クーリングオフに限って消費者側から一方的な契約の撤回や解除が無条件にできる。損害賠償金や手数料なども払う必要もない。業者には全額返金が義務つけられていて、引き取り費用も業者負担になる。
クーリングオフができる契約は限られている。販売方法に注意が必要
消費者の強い味方であるクーリングオフ制度。しかし、どんな契約でもクーリングオフができるわけではない。注意したいのは販売方法だ。
業者が不意打ち的にアプローチしてくる訪問販売や電話勧誘販売、マルチ商法とも言われる連鎖販売取引が対象となる代表的なものだ。店舗での契約は「自発的に店に訪れた」とみなされ、クーリングオフの対象外だ。また、ネット通販なども消費者に熟考期間があるとみなされて適用外になる。
また「特定継続的役務提供」という文類に入るエステや外国語会話教室などは、店舗での契約でもクーリングオフの対象になるので、注意しておきたい。具体的な商品・サービスは国民生活センターのホームページなどで確認できる。
無条件で解約 8日以内に
クーリングオフで一番重要なことは「スピード」だ。クーリングオフ期間は販売形態によって違うが、多くが該当する、しかも最短の「8日間」をめどに実効することが大切だ。
クーリングオフ期間内なら無条件でできる解約の「1日でも期間を過ぎれば、天国と地獄ほど難しくなる」。こう話すのは、クーリングオフ代行サービスを行う行政書士エクステージ総合法務事務所の代表行政書士、水口結貴さんだ。
クーリングオフ期間は契約書を受け取った当日から数える。また、クーリングオフは書面で行うことも覚えておきたい。水口結貴さんによれば、「まずは電話で」などと業者に連絡を取ると「理由を問い詰められたり、のらりくらりかわされたりして期間切れになってしまう場合が多い」とのことだ。
クーリングオフをしたい場合は、日付、氏名と契約商品、それを解除する旨を書いて郵送する。特に決まった形式はないが、「出した事実」と「日付」が重要なので、配達記録郵便か、内容証明郵便で送るといいだろう。また、ローンを組んでいる場合は同じ書面を信販会社に送ることも忘れずに。
もし、クーリングオフ期間を過ぎていても、契約書を受け取っていない、書類に不備がある場合はクーリングオフ(契約解除)ができる場合もある。あきらめず、専門家に相談しよう。