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日本テレビ 「情報ツウ」2004年12月21日

電話だけでなく、直接会ってまで金を取る
新たな架空請求の手口とは

架空請求と言えば、電話で様々な理由をつけ、言葉巧みに金を振り込ませるもの…と思い込んではいけない。架空請求の被害を受けたAさんに話を聞いた。先月、Aさんに「全国情報管理教会」と名乗る女から電話があった。女は、メンバーズクラブから問題が発生している会員にかけていること、このまま放置すると裁判費用を含めて数百万円の請求がくる、等と身に覚えの無い話で高額金額を請求された。女は続けて「そうなる前に少しでも負担を抑えたいと思って」電話をしたと言う。Aさんは、5年前まで旅行のメンバーズクラブに加盟していた。女は、Aさんが会費を滞納していて、メンバーズクラブが訴えていると言う。女は、直接会えば、数百万円の請求を少しでも減らせると言った。全く身に覚えのなかったAさんは、この女と会うことにした。女は指定した場所を伝え、身分証と印鑑を持参するように指示。Aさんが理由を尋ねると「情報開示を行う時に本人確認をするため」・「開示依頼書に印鑑を押してもらうため」と説明した。

以前の契約を引き合いに出して、ありもしない裁判話で不安を煽り、
高額な費用を請求する

指定された場所に行くと、女が現れ、裏通りのビルへと案内する。そして、2階へ。そこは間仕切りされ、小さなブースになっていた。10分程で、相談員を名乗る20代後半の男が現れた。
男は、Aさんに「以前メンバーズクラブに入っていたか、または呼び出されて商品を買わされた事があるか?」を確認。Aさんが、以前はメンバーズクラブに入っていたが、退会手続をしたことを告げると、男はいきなり「相談を受けるには本人確認が必要だ」と言う。Aさんは、「本人確認の前に、こちらの確認をしたい」「どんな団体なのか?」と説明を求めると、男は「業界内の団体」と曖昧な返答。何の業界か?と重ねて質問すると「メンバーズクラブ業界」と言う。重ねて「前に入っていたメンバーズクラブからクレームがあったのか?」と質問すると「たぶんクレームが来たから、こちら連絡した」とあやふやな返答をする。「たぶんって…」と突っ込むと、「個人情報の関係で詳しい話は伝えてもらえない」とごまかす。反論するAさんに対して、男は執拗に身分証と印鑑の提出を迫り続ける。なぜか?

悪質な2次勧誘について、専門家に聞いた

悪質商法・消費者問題の専門家、エクステージ総合法務事務所・代表行政書士 水口結貴さんによれば、このような手口は「2次勧誘」と呼ばれ、以前の契約を引き合いに出し、「高額な未納金がある、裁判が起こされているが、それを『示談』という形で手続をする」等と、嘘の説明をする。そして、そこで新たなローン契約を組まされるのだ。水口結貴行政書士は、Aさんに新たなローン契約を組ませるために、身分証と印鑑にこだわったのではないか、と指摘した。

悪質架空請求業者の実態を掴むため、取材班が張り込みをした結果は…

1日目。昨日Aさんが連れて行かれた会場名が書かれたプレートは、すでにドアから外されていた。管理している不動産会社に聞くと、この部屋は、2階・3階を1人の借主が別の会社名で契約をしているとのこと。但し、ビルの入口には2階・3階ともに会社名は表示されていない。3階から降りてきた男が近くのコンビニで払込をした。その金額71万円。1ヶ月分の複数の携帯電話料金だ。その後、動きは無かったが、7日目。
2階の電気がつき、部屋へ向かうとまたもや「浜松町会場」の張り紙が。取材を申し込もうと中に入ると誰もいない。掲示されていた内線番号にかけてみると、「担当がいない」ため、改めて来てくれ、との回答。いつ来ればいいのか?と尋ねると、担当者から電話させるので…と電話番号を聞かれる。しかし電話が無く2時間。その時、複数の女がビルから出てきたため、後を追う。その中にはAさんを迎えに来た女も居た。しかし、女はビルから出てきたことも、関係者であることも認めようとはせず、立ち去った。
翌日、改めてビルを訪ねてみると2階・3階ともにモヌケの空のよう。

業者はなぜ、逃げたのか? 再び、専門家に聞いた

そこで、再び行政書士・水口結貴さんに聞いた。「こういう二次勧誘に『使われやすい場所』というのがあるので、また悪質業者が戻ってくる可能性もある」ものの、「二次勧誘を行うグループは限られているため、同じメンバーで場所を変えて、同様な手口を重ねる可能性がある」と説明してくれた。
身に覚えのない請求が来ても、業者の説明を鵜呑みにせず、できるだけ早く法律家に相談するようにしたい。

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日本テレビ 「情報ツウ」2004年12月24日

男性には対応せず、女性には「裁判」を連呼する
新たな架空請求の手口とは

番組スタッフに、全く身に覚えの無い請求ハガキが届いた。そこには「電子通信料金の未納分がある」ので連絡するようにとあった。送り主は「日本債権管財教会」なる所で、連絡をしなければ、裁判になると書かれている。記載されている番号に電話をかけてみると、まず「IPコード」を読むように言われる。ここでスタッフがテレビ局名を名乗ると相手は電話を突然切った。そこで、別の男性スタッフがテレビ局名を名乗らずに電話をしてみると、またもや突然、電話は切られた。
そこで、さらに別の女性スタッフが電話をすると、今度は突然切ることは無く、やはり名前と分類コードを確認してくる業者。そして、「未納料金は2,800円で、すでに裁判になっている」と言う。何の料金かと訪ねても、「だいぶ前のものなので」とごまかし、続けて「もう裁判受理されていると思う」と「裁判」を強調する。そして裁判を撤回したいなら、今日の15時までに撤回費用を払えと言う。その金額68万円。これを弁護士に直接振り込めと続けた。さらに弁護士の名前を「ヒラツカツヨシ」と言う業者。撤回しなければどうなるのか?と尋ねるスタッフに、「出廷して裁きを受けることになる」と業者は言った。さらに、「裁判前だからこの金額で済んでいる」、「裁判が始まれば、もっと大きな金額が当然かかる」と不安を煽る発言を繰り返す。そして、スタッフが会社名を聞くと、ハガキに書かれている団体名とは違う名称を名乗った上、スタッフがその違いを指摘すると「裁判によって課が違う」等と説明した。

弁護士をかたって、不安を煽る発言を繰り返す悪質業者
最近では、集団での犯行が増えている

スタッフは、一度電話を切り、振込期限と業者が言った15時前に再度、電話をした。
スタッフが「不明点が多いので、お金は支払わない」、「不明点が多いのに、いきなり68万円を振り込めと言われても」と言うと、「振り込めなんて言ってないでしょ」と逆キレする業者。続けて、スタッフが「架空請求なんでしょ?」と問い詰めると、いきなり電話を切った。
その後、なんと「弁護士のヒラツカ」と名乗る男から、スタッフへ電話がかかってきた。しかし、この名前の弁護士は弁護士協会の名簿には載っていない。自称弁護士は「裁判が始まれば、あなたの立場が悪くなる」、「裁判の撤回をしなくていいのか?という確認の電話」だと言う。スタッフが「15時までに振り込むはずではなかったのか?」と尋ねると、自称弁護士は「そう、間に合う」と言う。続けて「時間外でも振り込んでもらい、明細書を法律事務所に送ってくれ」、「それで辞任する」と続けた。スタッフが、弁護士事務所名等を確認すると、はぐらかす自称弁護士。
架空請求は、以前は一人で行われることが多かったが、最近では集団での犯行が増えている。自称弁護士との電話を切った後、その前に話した業者から電話がかかってきた。
スタッフが「架空請求が増えているので、慎重になる」と言うと、「内入れ金でもいい」と請求額を50万円に下げ、執拗に請求してくる。さらに、第3の人物からも電話が。
「一部入金の件はどうするのか? 裁判取り下げる気があるなら…」と聞いてくる。スタッフは、「お金は支払いません」ときっぱり断ると、「弁護士の費用だが」と話が変わり「自分(業者)が30万円、ヒラツカ先生(自称弁護士)が50万円で決定した」、この金額を1週間以内に支払えと言う。何のお金か?とスタッフが尋ねると、自分達が動いた分と言う。最後には「司法で戦いましょう。家族、親戚に全て出す」と捨てセリフで電話を切った。

悪質な架空請求について、専門家に聞いた

悪質商法・消費者問題の専門家、エクステージ総合法務事務所・代表行政書士水口結貴さんに、悪質な架空請求について聞いた。このケースは、典型的な架空請求のケースであり、女性にきつく対応するのも、警戒心の無い人・信じてくれそうな人ばかりをターゲットにしているからだ、と教えてくれた。実際に、架空請求ハガキを受け取った人に聞いてみると、ハガキも段々、使う名称が有名弁護士や団体名を真似したものになったり、「督促状」等の赤い文字が大きくなっていくという。

自称警察官も登場
悪質架空請求詐欺の最新手口とは

警察庁によれば、2004年1月~2004年11月までの振り込め詐欺の被害は、222億円に昇る。架空請求・振り込め詐欺の手口は、ますます巧妙化している。
世間を騒がせている「オレオレ詐欺」。最近は、6人から詐欺の電話がかかってきたケースもある。例えば、息子を装った男から「大変なことをしてしまった…」と電話があった後、警察官を名乗る男から「息子さんが6歳の女の子をはねた」との電話があった。この電話を信じた57歳の女性は、保釈金として300万円を振り込んでしまった。さらに、女性の元に弁護士を名乗る男から電話があり「600万円で示談が成立したので、そのうち200万円を振り込んでください」と言われ、その後も保険会社や司法書士を名乗る人物から電話があり、合計で500万円近いお金を支払ったのだ。
スタッフは資料を集め、様々な架空請求業者に電話をかけた。架空請求ではないのか?と問うスタッフに「法務省の認定を受けている」と言う業者。中には、呼び出して実際に会って請求する業者も。
架空請求・振り込め詐欺に関しては、何よりも無視することが1番と水口結貴さんは説明する。そして、電話で個人情報等をしつこく聞かれた場合でも、不用意に個人情報を与えると、さらに電話がどんどんかかってくるなどの被害を呼んでしまうので、絶対に個人情報は教えないことを徹底するように、とアドバイスしてくれた。

ごく稀に、裁判上の支払督促・少額訴訟で請求がくる場合も
実際の裁判手続は無視しないで、すぐに法律家へ相談を

しかし、「ごく稀に、支払督促・少額訴訟といった、実際に存在する裁判手続を悪用して請求をしてくるケースがある。この場合は、異議申立をする等、対処をしなければならない」、「放置しておくと本人に不利益になってしまう」と、水口結貴さんは、新たな架空請求手口への注意点を教えてくれた。
さらに、架空請求と本物の裁判所からの書類の見分け方について、「裁判所からの書類がハガキで来ることは無い」、「『特別送達』という封書でくるので、わかると思うが、不安な場合は実物を持って警察や法律専門家、消費者センター等へ相談をすると良い」、「もし電話をする場合は、ハガキに書いている番号ではなく、必ず自分の住んでいる地域の裁判所等の番号を自分できちんと確認してから、連絡をするように」「たとえ、裁判所からの書類であったとしても、その日のうちに振り込めなどということはあり得ない」とアドバイスしてくれた。

また、特に狙われやすい人として
○以前に悪徳商法等の被害を受けたことがある人
このような人達の名簿「カモリスト」と呼ばれ悪質業者間に出回っている。
○結婚している男性
体裁・立場を気にして「アダルト料金の請求」・「出会い系サイトの請求」等と言われると人に相談しにくく、払ってしまう。
○20代~30代の女性
比較的使えるお金があること、女性の方が真面目にお金を払う傾向があるようだ。

もし架空請求などで対応に迷ったり、不安な場合はできるだけ早く、法律専門家に相談をするようにしたい。

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日本テレビ 「ニュースプラス1」2005年1月12日

法の網をくぐり、個人事業主を狙う
「高額」・悪質な電話契約トラブルが増えている

普段「デジタル化をしないと、今後、電話器が使えなくなる」等と、嘘の説明をして高額な電話リース契約を結ばせる悪質商法が増えている。
被害者のAさんは、業者から「電話リースしかない」と言われて信じてしまったのが、バカだった…と悔しそうに話す。Aさんは、都内で鍼灸院を営んでいる。
去年6月、業者は突然、Aさんが経営する鍼灸院を訪問してきた。そして、「NTT関連の者だ」と名のり、こう話した。「今のままでは、この電話機が使えなくなりますよ」と言った。業者は続けて、「NTTが光ファイバーやADSLの工事を行なっている。だから電話が鳴っても切れたり、繋がらない」と言い、続けて「電話機を代えないと改善されない」と言って、リース契約書へのサインをAさんに求めてきた。
ADSLや光ファイバーとは、電話線などを使った最新の高速通信のことだ。男は、こうした単語を巧みに操って「今、使っている電話では通話ができなくなる」、「代わりに自分の会社が電話機を貸すので、リース契約をしてほしい」ともちかけたのだ。
「やっぱり商売がらみで、デジタル化や高速化と言われると…」「通じなくなるなんて言われると、やっぱりひっかかちゃいますね」とAさんは言う。そして、Aさんは結局、7年間で約35万円電話機のリース契約を結んでしまった。しかし、NTTによれば、高速通信で電話機が使えなくなることは無いという。男の話は全くのデタラメだった。

被害の中には1000万円以上の電話リース契約も

東京都だけでも、今年上半期のトラブルは282件に昇る。2年前と比べると実に2倍の数だ。被害者の殆どは、Aさんのような中高齢者だ。悪質業者は「高速化」や「光ファイバー」と言った言葉を使って、通信事情に詳しくない中高齢者を騙して、契約をとりつけているのだ。
中には、店番をしていた72歳の女性に7年間・100万円の電話リース契約を結ばせた例もあるのだ。知識がないことに付け込んだ悪質な手口だ。
後から、悪質業者の説明が嘘と気づいても解約できない。その「罠」とは

しかし、こうした悪質な業者に騙されたことが後でわかっても解約できない「罠」があるという。
悪質商法・消費者問題の専門家、エクステージ総合法務事務所・水口結貴行政書士に聞いた。
水口結貴行政書士は、「“特定商取引に関する法律”の場合、契約しているのが中小事業主の場合は、クーリングオフは適用されない、と説明してくれた。
クーリングオフとは、一定期間内なら契約を無条件に解約することができる制度。しかし、個人の場合に限られる。個人事業主や法人の場合は、クーリングオフはできないのだ。つまり、一度契約をすると途中解約はできず、全額を支払わなくてはいけないケースもあるという。
「クーリングオフ」とは、一定期間内なら解約することができる制度のこと。しかし、個人の場合に限られる。
Aさんのように、業務目的で店の名前を使って契約した場合、この制度は適用されない。
つまり一度契約すると解約することができず、全額支払をしない場合がある、ということだ。当然、悪徳業者はこの法律を知っている。

消費者問題に詳しい法律家に聞く、悪質業者に「騙されないコツ」

では、どうすればこうした悪質業者に騙されないですむのか?
水口結貴行政書士は、下記の3点が大事、と教えてくれた。
1. 契約書をよく読むこと
2. 安易に印鑑を押さないこと
3. 一人で判断せず、誰かに相談した上で慎重に考えること

「今の電話機は使えなくなる」、こんなセリフには注意が必要だ。因みにAさんは、代金を支払う前に専門家に相談して「契約無効」の書類を送付した。その後、業者の連絡は一切ないという。

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TBS「ニュースの森」2005年1月19日

業者が声を合わせ、健康への危機感を煽る
相次ぐ摘発でも「催眠商法」は無くならない

普段催眠商法とは、主に高齢者をねらって会場に集め、業者が健康不安を煽って高額な健康食品や布団を買わせる手法。相次ぐ摘発にも関わらず、その手口は進化し、今も被害は無くなっていない。
2004年12月、取材班は東京都町田市で催眠商法の現場を直撃した。閑静な住宅街に突然、長い行列ができている。近づくと、大半は高齢者で手には「大特価・タイムサービス」と書かれた1枚の券を持っている。常連客によれば、ここは健康食品の店で、定価1,000円以上の物が100円で買えると言う。但し、「話を聞くこと」が条件なのだ。取材班も会場の中に入ってみた。

ゲームや歌などで盛り上がる会場内では
「万病に効く」という高額健康食品が飛ぶように売れていた

会場内では、音楽が大きな音で流れ、20代と思われる店員達が忙しく動き回っている。
そして店員が「これ、若返りの水」と言いながら、来場者に水をついでいる光景も。会場は満員で、100人近い人が集まった。挨拶に続いて、なぜかげゲームが始まった。別の日に、取材班が潜入した時は、歌で会場を盛り上げていた。必ず、会場内の客全員が動きや声を揃えるのが重要らしい。こうした前ふりの後、話題はようやく「健康」へと移った。店長が登場し、約1時間、健康について語る業者。そして、会場では様々な商品を紹介するカタログが配られる。

しかし、業者の健康指南話の最後に登場したのは、このカタログには載っていない商品だった。ある健康食品で、販売価格は36,000円。サンプルが来場者全員に配られた。業者は、この商品を「50本限りの入荷」と希少性を強調する。そして、食品の原料の説明。非常に貴重な漢方を使っていると、またも希少性をアピールする業者。胃潰瘍、胃腸関係の特効薬と言われる漢方で、コレステロールを下げる薬として珍重されており、関節痛・神経痛にも良いと効果を強調する。その後も、睡眠に良い、冷え症の特効薬である、婦人科系の病気・更年期障害の特攻薬、脂肪燃焼にも…等、薬効の説明が続く。さらに、業者は「婦人科系のガンの方には、非常に良い」、「万病に効く」等、薬事法違反スレスレのトークを繰り返す。
店長の説明に対して、周りの店員が「ハイッ!」、「ハイッ!」と合いの手を入れる。これが、非常な早口で行われる。また、「○○大学の薬学部に持っていき、漢方の原材料を持ち込んで、万人のありとあらゆる病気を持っている人に、良い結果が出るように研究・計算してもらった」と信頼性の高さを強調する業者。会場では、この商品が飛ぶように売れた。
消費者問題に詳しい法律家に、販売方法の問題点などを聞いた

悪質商法問題の専門家、エクステージ総合法務事務所・代表行政書士の水口結貴行さんに問題点がないか、などを聞いた。水口結貴さんは、この業者の販売法に対して、「ゲーム等を初めにやることで、『前にいる人の指示に従う』という心の基盤を作らせていくのは、催眠商法ではよくある」と指摘する。また、最初のゲームにも客を催眠状態にする狙いがあると説明してくれた。
さらに、「催眠商法を行う悪質業者は、高齢者をターゲットにしているので、健康問題は切実なもの」。だからこそその不安を上手についている、ということだった。

かつての催眠商法と違って、脅したり恐怖をあおる業者は減少している。
最近、政府が発行したパンフレットでは、催眠商法の新たな手口として「健康講座商法」が紹介されている。その特徴は次のようなものだ。
1.薬効をうたって健康食品を売るのが目的
2.「~だけ」、「限定品」と割安、価値を強調
3.販売員が嘘や大げさな説明をすることもある
同じような販売法で、高額商品を買った人は全国に広がっている。催眠商法の被害者本人が、その効果を信じてしまうと被害を訴えることはなく、家族からの相談で被害が発覚することも多い。

潜入取材をした業者に、販売方法に問題はないのか?と取材をしたが、「店舗では薬事法に触れるような説明は一切行なっていない」と、かたくなな返答だった。
取材ビデオを持って業者本社を訪ねると、社長は「あくまでも原料の漢方薬の説明をしているだけで、健康食品の薬効では無い」と言う。実際に購入者が糖尿病に効くと言われたと尋ねても、「客が説明を勘違いしただけ」との回答だった。ただし、店長が主張していた「データ」の存在を問うと「データについては覚えが無い」とようやく販売方法の違法性を認めた。特定商取引法では、虚偽の説明をして商品を販売した場合は、2年以下の懲役、または300万円以下の罰金が規定されている。
目先の「割安」や「~だけ」に惑わされず、また、過度な薬効をうたっているものは注意をするなど気をつけたいが、被害にあってしまった場合は、できるだけ早く法律専門家へ相談したい。

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テレビ朝日 「決定!これが日本のベスト100」2004年1月24日

知っているようで知らない、身近な法律に
ついて各ジャンルの専門家が解説

皆さんが「常識でしょう」と思っていることでも、世間一般の考え方が変わったり、法律が変わったりして「常識ではない=間違っている」こともよくあります。

芸能人100人をランキング!
「今さら人に聞けない常識テスト」
今日は、そんな「常識」と皆さんが思っていることが、本当にそうなのか?を、各分野の専門家に解説していただきます。今日、挑戦していただく分野は、次の6つです。
1.食事マナー&冠婚葬祭編
2.法律&お金編
3.ことば編
4.時代&世相編
5.エンターテインメント&アニメ編
6.食事マナー&料理編
それでは早速、クイズに朝鮮していただきましょう。

1.食事マナー&冠婚葬祭編

1)ご祝儀袋の包み方、正しいのはどっち?(折が上向きか、下向きか?)
正解…上向き
2)ステーキの焼き方、あと1つは何?(レア、ミディアムと?)
正解…ウェルダン
3)同じくらい親しい知人の結婚式と葬儀が重なった場合、どちらに行くべき?
正解…どちらを優先してもいい

2.法律&お金編

「法律」編を解説していただくのは、行政書士エクステージ総合法務事務所の代表行政書士、水口結貴先生です。この問題を「今さら、人には聞けない」と思った人は、100人中76人でした。

例えば、ある日、家に突然、業者(販売員)が訪問してきて、宝石などの品物を買ってしまった場合があるとします。ここで、問題です。
「訪問販売などで買った品物をある一定期間内であれば解約できる、消費者契約法に基づく制度は、何でしょう?」

答えは「クーリングオフ制度」。
「クーリングオフ制度」とは、突然の訪問販売、電話勧誘販売、マルチ商法などによる取引を一定期間内なら一方的に解約できる制度のことです。

水口結貴さんは悪質商法、消費者問題の専門家です。「クーリングオフ制度とは、一定期間内であれば、訪問販売・電話勧誘販売等、法律で決められたある一定の取引を消費者の側から一方的に解約できる制度」のこと」、と制度の説明してくれました。
しかし注意点もあるということで、続けて、「ただし、店舗や通信販売で買った場合や、商品を開封した場合や、化粧品等の消耗品を開けてしまった、使ってしまった場合には適用されないので、注意が必要」と教えてくれました。また「クーリングオフ制度を使うときには、必ず専門家などに相談することをお薦めします」とも。因みに、一般の方の正解率は68%、芸能人の方は73%でした。そして、この問題を「今さら、人には聞けない」という方は、100人中44人でした。

さらに、注意したいのが「クーリングオフができる期間」です。訪問販売・電話勧誘販売では8日間、マルチ商法等は20日間と、その取引形態によってクーリングオフ期間も変わってくる。さらに、この「8日間」は「契約書面を受け取った日」を1日目と数えていきます。
また、「クーリングオフ期間の起算日」にも注意しましょう。
誤解している方も多いようですが、クーリングオフ期間は「契約をした日(申込をした日)」から始まる(進行する)のではなく、「法律で決められた契約書面を受け取った日」から、日数のカウントが始まります。
悪質業者の中には、クーリングオフを消費者個人が申し出でると「申込日から、8日を過ぎているので、もうクーリングオフはできない」と嘘をいう所もあるようです。
思い込みやうろ覚えの知識で対処するのではなく、悪質商法で困った場合は、できるだけ早く法律専門家に相談するようにしたいものです。

次はお金に関する常識です。
1ドル120円が118円になると円高? それとも円安?
正解…円高
円高とは「円の価値が上がること」です。

3.ことば編

1)くじらの数の数え方は、何というでしょうか?
正解…頭(とう)
2)「吾輩は猫である」(夏目漱石著)の冒頭の一文は?
正解…「(吾輩は猫である)名前はまだない」
3)女子中高生が携帯電話のメールで使用するギャル文字。これは何と読む?
「よゝや§みナょ±しゝ」
正解…「おやすみなさい」

4.時代&世相編

1)1970年代末、原宿の歩行者天国を埋め尽くした若者たちは「○○族」と呼ばれた?
正解…竹の子族
2)昭和30年代後半、子どもたちが大好きだったものは「巨人・大鵬・?」もう一つは何?
正解…たまご焼き

5.エンターテインメント&アニメ編

1)NHK紅白歌合戦の(現時点での)最多出場歌手はだれ?
正解…北島三郎(54回中41回出場)
2)「クレヨンしんちゃん」の、しんちゃんは自分の「おちんちん」を何と呼ぶ?
正解…ぞうさん
3)「ドラえもん」の、のび太が得意な3つのものは、あやとり、射的ともう1つは何?
正解…昼寝(寝ること)

6.食事マナー&料理編

1)洋食で魚を食べるマナーで避けた方がいいのはどちら?
A)魚の骨を折る
B)魚をひっくり返す
正解…B)魚をひっくり返す
2)世界三大珍味の1つとして有名は「キャビア」は何の卵?
正解…チョウザメの卵
3)明太子は、何の魚の卵巣から作られる?
正解…スケトウダラ普段

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日本テレビ 「ニュースプラス1」2005年2月3日

電話では、全く販売目的を告げずに呼び出して高額商品を売る「デート商法」。
その実態は?

番組女性スタッフの携帯に突然かかってきた電話。電話に出ると、男は「おめでとうございます。懸賞のネックレスが当選しました」と言う。懸賞に応募した覚えの無いスタッフが通知された番号にかけ直して「ネックレスが当たったので、店に取りに来てください、との事だったのですか、お金はいらないのですか?」と訪ねると、業者は「全然いらないです」と明確に答えた。
3日後、スタッフは待ち合わせの場所に向かう。電話の相手は、渋谷にあるブライダル関連の会社に勤めているということだった。現れた男性販売員に連れられて、歩いて5分程という店舗へと向かった。道すがら販売員はスタッフに対して「絶対、モテますよね?」等と、ほめ続ける。歩いて15分、ようやくショールームに到着。そこは大通りから外れた住宅街の一角にあった。店内は大音量で音楽がかかり、数多くの宝石が並ぶ。奥には広いフロアがあり、若い男性が女性販売員と話をしている。

懸賞品を受け取るだけのはずが、いつのまにか
「自分がデザインした」高額ジュエリーの売り込みに

男性販売員は、女性スタッフを座らせると懸賞で当たったというネックレスを出した。販売員はスタッフの首にネックレスをかけると、おもむろに「ジュエリーにどんなイメージがありますか?」と話してきた。そして「ジュエリーは【縁ときっかけ】のもの」、であり「自分自身がすごく好きな商品がある」、「今、世界一輝くダイヤモンドだ」、「せっかくだから、色々とお見せします」と、たスタッフが話を返す間も無く続け、巧みにダイヤ販売の話にして、どんどん高額商品を出してきた。
そして、オリジナル商品だというダイヤの指輪を勧めてくる。そして、スタッフが「買う」とも何も言わないうちに、電卓を叩き「月々、35,700円」と勝手に分割払いの提示。この指輪、総額は何と214万円。スタッフが購入を断ると、上司と思われる男性販売員が近づいてきて、まずスタッフを「かわいい」とほめる。

商品を変えながら、販売員の執拗な勧誘は続く
分割払の金額を強調して、総額(高額品)から注意をそらす

販売員は、商品を変え「ネックレスとリング」を見せ、「どっちがいいですか?」と別商品の勧誘に移った。「会社でつけやすいのはネックレス」と答えたスタッフに対し、別なネックレスを出してきて、首にかけ「印象がすごく変わります」とまたも褒める販売員。上司も「ピアスをサービスでつける」と販売員へ応援トーク。上司は続けて、スタッフがつけたネックレスを「特別品」、「特注中の特注」等と希少性を強調する。二人の販売員は、あくまでも分割払の金額を強調して、総額が非常に高価であることから注意をそらそうとする。実は、スタッフが勧められたネックレスとピアスは総額で105万円という非常に高価な物。しかし、総額は一切、話には出てこない。スタッフが、「今日決めないといけないのか?」と尋ねると、上司の方が「1週間考えても、1年考えても決める時は一瞬」と、暗に今、決断するように返してくる。スタッフが続けて「皆、その場で買うのか?」と質問すると上司は再び「9割くらいの人は買う」、「商品が目の前にある時に決めないと」とやはり決断を迫る返答。スタッフが、そもそも懸賞品を取りにくるつもりで「買うつもりではなく来た」と言うと、上司は意外にあっさり、「うちはデート商法はやっていないので」とスタッフを帰してくれた。しかし、店を出たのは来店してから何と5時間後。因みに懸賞で当たったというネックレスは、銀メッキの物。専門家によれば100円程度の物とのこと。
そして、その後も販売員から1日1回はスタッフに電話がかかってきて、執拗な勧誘が続いた。

業者販売店に密着。すると、次々に若者が…
喫茶店に販売員と同席までした、男性客に聞いた

店舗から、男性客と女性販売員が数組出てくる。いずれの女性販売員も笑顔たっぷり。5時間のうちにおよそ、10組の男女が出てきた。そのうちの1組、女性販売員が男性客と一緒にどこかへ向かう。そして、二人は喫茶店へ。食事の間も笑顔が絶えず、趣味の話等、まるで恋人同士のような会話が繰り広げられる。その後、女性販売員は、男性客が駅のホームに行くのを見届けた。勧誘を受けたAさんに、宝石販売の勧誘があったのか聞いてみた。Aさんは「ウエディングプランナー」と名乗る女性から電話があり、「一度、お店に来てください」と言われたとのこと。Aさんは断りづらく、来てしまったと言う。そしてAさんは8時間に渡る勧誘を受け、宝石(アクアマリンネックレス)購入の契約をしていた。総額42万円。電話では販売目的は告げられなかったそうだ。価格が適正なのか、百貨店で同じカラット数のアクアマリンの値段を見ると、36,000円。自分が契約した10分の1以下の金額で売られているのを見たAさんは愕然。解約をするために、業者に電話をかけるAさん。解約したい旨を告げると、女性販売員は意外に「クーリングオフ期間中でキャンセルできるからいい」と意外にあっさりした対応だった。しかし、女性販売員はAさんを説得し続け、30分後には上司が代わりにAさんと話す。結局、解約することはできたものの、約1時間にも渡って理由をしつこく聞かれた。

デート商法の被害者も愕然とする、商品価値

スタッフは、デート商法の被害にあったとう20歳の女性(Bさん)を訪ねた。昨年10月、販売目的を告げずに電話で勧誘され、ダイヤモンドのネックレスと買ってしまったという。買った品物は、5年ローンで総額約65万円という高額な物。Bさんは、学生だからそんな高額品は払えないと言ったが、業者は「うちは、ローンの期間が長いから、月々の支払が安くできる」と勧めてきた。断れない雰囲気だった、とBさんは続けた。Bさんは5時間にも渡って勧誘を受け、心理的なプレッシャーから購入してしまったと続けた。Bさんが買ったネックレスを専門家に鑑定してもらうと、結果は小売価格で15万円~20万円という回答。この結果にBさんはショックと同時に、悔しさが隠せない。

元販売業者の社員が明かす、デート商法の手口とは

スタッフは、この業者に勤めていたという元社員から話を聞くことができた。主な仕事は、名簿業者から入手した個人情報を元に電話をかけることだったと言う。「販売方法が特定商取引法に違反しているから危険と思っていた」と証言する元社員。手口の1つが「とにかくほめること」。「ほめる所が無い人でもほめる」と言い切る。そして、元社員は契約後に客と食事をする理由について、「一人で、店を出てそのまま帰ると、冷静になってしまい、『しまった』と契約を後悔してしまう」、だから「それを防ぐために、さらに喫茶店や食事で色々と話す」、そして「『解約する』という電話がしにくくなるようにする」と 語った。国民生活センターによれば、デート商法の被害相談件数は年々増え続け、2003年には2000件を超えている。別の男性Cさんは、やはり、電話で販売目的は告げられずに呼び出され、年収300万円にも関わらず、総額200万円のダイヤネックレスを購入してしまった。帰宅後、Cさんはすぐに解約の電話をしたという。

消費者問題に詳しい法律家に聞いた デート商法の問題点は

このような販売は、いわゆる「デート商法」と呼ばれるもの。デート商法とは、販売目的を告げずに、異性に好意を抱かせるような言動で高額商品を販売する手法だ。被害者の多くは20代前半の若者だ。
悪質商法に詳しい、消費者問題の専門家、エクステージ総合法務事務所・水口結貴行政書士は「クーリングオフ制度は消費者の権利」であって、「理由に関係なく一定期間内は無条件で解約ができる」と教えてくれた。水口結貴行政書士は続けて、「悪質業者が何か、理由をつけて解約を妨害すれば『クーリングオフ妨害』で、特定商取引法違反になる」という。このようなクーリングオフ妨害をした業者には罰則規定もある。さらに2004年11月、改正特定商取引法が施行され、販売目的を隠して個室・店舗等に誘い込んで商品販売の勧誘をすることが禁止された。

販売目的を告げずに、消費者を呼び出していた
業者を直撃取材

当番組のスタッフに、業者から電話があった。その電話で販売目的を告げず、違法な勧誘を続ける宝石販売業者に取材すると、業者はあくまでも「一販売員のやったこと」と会社ぐるみの関与を否定。しかし、取材中に番組女性スタッフに2ヶ月間に渡り、勧誘を続けるこの業者の販売員から電話がかかってきた。そこで、取材中だった幹部社員が直接、販売員と話すことに。自ら、電話相手の販売員に「販売目的を告げずに、電話をしているのか?」と詰問。その後、幹部社員と同席していた別の幹部社員が一時退席し、また戻ってきた。スタッフに電話をかけてきた販売員は課長だったが、降格させたと言う社長。その後、業者は自らの非を認め真摯な態度に一変。しかし、なお会社としての責任は一切ないと主張する。

こんなセリフで、かかってきた電話には用心しよう
デート商法に相手を呼び出す、巧みなトークとは

例えば、デート商法の業者はこんなセリフで電話をかけてくる。
「今、お店の案内を兼ねたアンケートをやっている」ので、「よかったら、お店に来てください」。販売目的は一切、言わない。
デート商法は、「未成年取消」ができなくなる、新成人が狙われることも多い。甘いトークに惑わされず、対応に困った時にはできるだけ早く、法律専門家に相談するようにしたい。

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TBS 「ニュースの森」2005年2月21日

「環境保護」・「リサイクル」を前面に出して
金集めをする業者

群馬県前橋市の住宅街で、ひときわ目立つ大きなビル。生ゴミ処理機等を販売する業者の本社だ。荷物を運ぶ男性や高級外車に乗り込む若い女性。そして群馬県警の車両まで。周囲は慌ただしい雰囲気だった。

被害者の一人、Aさんに話を聞いた。
Aさんは、「一切、入金は無いし、業者から連絡も無い。皆、だまされたと思っている」と言う。Aさんは、「環境保護に貢献できるだけでなく、副収入も得られる」という業者のうたい文句を信じて、1年ほど前に生ゴミ処理機を購入。家庭から出る生ゴミを微生物によって土状に処理するという機械だ。購入価格は336,000円。かなり高額だが、「家庭の生ゴミは大きな収入源」・「生ゴミを処理して大きな収入を得る」・「毎月10,500円の安定収入が保証される」とうたう業者の説明を信じたのだ。業者によると、処理された生ゴミは「肥料原料」として価値が高く、有機肥料工場が毎月1万円で買い取るという。処理機の代金が33万円でも、生ゴミを工場に送るだけで、3年程度で元が取れ、その後は儲かるだけと説明した。Aさんが処理した生ゴミを業者に送ると、最初のうちはAさんの口座に業者から振込があった。また大会場で会員を集めたイベントも行われ、Aさんはすっかり業者を信じてしまった。

業者から振込があったのは、1年にも満たずそして、音信不通になる業者

しかし、2004年9月を最後に、業者からの代金の振込は無くなった。問い合わせに対し、業者は「会員が増えすぎた事による一時的な事務トラブル」と説明していた。しかし、そのうち業者が電話に一切出なくなる。何度か事務トラブルを告げる手紙が続き、最後に「契約していた業務を05年5月末まで休止する」という一方的な通知が来た。Aさんは、「処理機を買って間もない人がかなりいる。機械を戻すからお金を返して欲しい」と訴える。Aさんは、この処理機を周囲に勧めていた。
一人紹介すれば6万円、紹介した人がさらに人を紹介すれば3万円、さらに人を紹介すれば2万円…と、手数料が入ってくるからだ。業者は、会員への振込を停止する直前までキャンペーンを行い、会員を増やしていた。
調べてみると、確かに生ゴミは業者から有機肥料を作る工場へと運ばれてはいた。しかし、工場側は業者に金は払っていないという。逆に、箱詰めされた処理生ゴミを開封する代金として、100円/箱を業者が払っていたのだ。工場は数ヶ月で業者との取引をやめていた。また、ある市民団体によれば、処理された生ゴミは高く見積もっても1000円程度の価値しか無いという。さらに、生ゴミ処理機は、某メーカーから業者が仕入れていたもの。メーカーの販売価格は59,800円+消費税と業者が設定した価格とは大きな差がある。

社長が「逃げる」と言っていたころ、
新会社を設立し販売代理店の募集をしていた

業者の内部事情に詳しい、という男性から電話があった。男性によれば、社長は周囲に「逃げる」ともらしていたそうだ。それは2004年12月頃。その頃、業者は新会社を設立して、インターネット状で販売代理店の募集を始めていた。
どんな点が問題なのか、悪質商法・消費者問題の専門家、エクステージ総合法務事務所・水口結貴行政書士に話を聞いた。水口結貴行政書士は、業者が、「お金を集めるだけ集めて、計画倒産したという印象を持たれないように、休眠状態にしたり、別組織を立ち上げることで『今後もサービスは継続している』というように見せたい」のだと説明してくれた。
簡単に儲かる話・甘い話には注意が必要だ。「特定商取引法」では、不実の告知をして商品を販売した場合は、2年以下の懲役または300万円以下の罰金の規定がある。判断に迷った時には、できるだけ早く、法律専門家に相談するようにしたい。
その後、福岡まで業者社長を追って取材を申し入れたが、「この会社は関係ない。取材なら群馬で受ける」と取材は拒否された。

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テレビ東京「東京夜塾」2005年3月3日,10日

若者を狙った悪質商法が横行している
被害に遭わないために、どうすればいいのか?

振り込め詐欺、架空請求、マルチ商法…。悪質な手口を使って消費者を騙す悪質商法が後を絶たない。東京都消費生活センターによれば、消費者からの相談件数は年々増え続け、その殆どが悪質商法に関するものだ。最近では、特に20代の若者からの相談が増えている。
悪質商法に騙されないためには、どうすればいいのか? 悪質商法・消費者問題の専門家、エクステージ総合法務事務所・水口結貴行政書士を交え、悪質商法の被害者と共に対談を行なった。参加者は、架空請求で多額の被害を受けたAさん、高額な宝石を買わされそうになったBさん、セールストークと悪質商法の違いがわからないと言うCさん、自分は絶対に騙されないと言うDさん、マルチ商法をやっていた経験があるEさん、
水口結貴行政書士に、被害者の体験から、悪質業者の手口やテクニックを解説してもらった。

架空請求を信じてしまうのはなぜなのか?
業者は、被害者の弱みにつけ込み、心理的に追い詰めていく

昨年10ヶ月間で、架空請求の被害総額は約40億円にも昇る。対談参加者に架空請求ハガキ等が届いたことがあるか、訪ねたところ、参加者5人中4人が経験有り。実際にお金を払ったことがある人も2名いた。Aさんは、携帯をいじっていた所、アダルトサイトの音声サービスにつながってしまい、「無料」という事で試しに使った所、電話番号が登録されてしまったようだという。その後1ヶ月程後に、知らない携帯電話から電話があり、「利用料が2300円、延滞料が約9万円」と請求されたのだ。そして相手が「警察に被害届を出す」、「払わなければ、あらゆる方法を使って取り立てに行く」等、脅しのようなセリフを次に言われたため、「何をされるのか…」恐怖感に駆られ、合計92,300円を支払ってしまった。
Bさんも、電話を変わった相手がヤクザ風の男が、全く同じように「家まで取り立てに行く」、「東京湾にお前を埋めてやる」等と言われたと話す。
しかし、水口結貴行政書士は「そうは言っても、実際に家に取り立てに来ることはない」と解説。それどころか「『東京湾に埋める』等と言ったら、それは脅迫であって、犯罪」、「実際に業者が来たとしても警察を呼べば大丈夫」と教えてくれた。

個人情報を聞き出して、業者はさらに脅しのネタを手に入れる
あたかも個人情報を取得したかのような画面を出して、消費者を追い詰める

ただ、被害者のAさんは「自分の事を調べられて、周りの人に迷惑がかかるのが怖かった」と言う。Aさんは、聞かれるがまま業者に電話番号や住所、実家の住所等の、個人情報を言ってしまったからだ。「業者は、このような個人情報を聞き出すために電話をしてくる場合もある」と、水口結貴行政書士は解説する。個人情報を取得することで、さらに脅しの手口が増えるからだ。また、「業者は本人が周囲にも相談しにくいだろうという事で『アダルトサイト』を使う。本人が『恥ずかしくて相談できない』という状況にするのが狙い」とも教えてくれた。Cさんは「払うだけで、周りにばれないなら、その方が早いし楽だから、自分も払ってしまうと思う」と言った。
Eさんは、別な架空請求の手口である「1クリック詐欺」について話した。1クリック詐欺メールで、ボタンを押すと「個体識別番号」なる物が表示されたと言う。そこには、自分が居たエリアや携帯番号の機種等も表示されており、非常に気持ちが悪かったとEさんは続けた。そして、期日までに払えと請求されたのだ。現在の携帯電話は性能が進化しているため、エリア情報等は比較的簡単にわかる。但し、エリア情報や機種が表示されたからと言って、これらの情報が悪質業者に伝わっているとは限らないし、そこから個人情報が判明することは無い、と水口結貴行政書士は教えてくれた。

公的機関を騙る、友人になりすます
悪質な架空請求の手口はどんどん巧みになっている

架空請求業者の脅しのテクニックはさらに巧みになっている。最近では裁判所等、公的機関の名を騙り、正当性を装う手口や友人を装って送ったメールからアドレスをクリックさせる手口、「裁判所に告訴する」という脅しメールも。
このような架空請求の場合、「わざと、利用してから3~4ヶ月経った後に請求する場合が多い」と水口結貴行政書士は指摘する。理由としては
○記憶を曖昧にさせる
○時間が経った方が「延滞手数料」の名目で高額な請求ができる
○「債権」等の法律用語を使うことで、「使った自分が悪い」と思わせる
を挙げる。また、架空請求業者には業者なりのマニュアルが在ると水口結貴行政書士は解説する。

一度、騙された人を「カモリスト」として保管する悪質業者
それが二次被害の温床になる
このような悪質業者に騙された人の個人情報を、悪質業者は「カモリスト」として保管する。そして、名簿が別の業者に出回ることで、次々販売等の二次被害を呼んでしまうのだ。「一度騙された人は、また騙される可能性が高い」ということだ。実際に、水口結貴行政書士に被害を相談した人の中には「5回騙されて、200万円を支払った」人もいると言う。悪質業者は「『カモリストから削除してやるから』と言って請求する所まである」ということだ。
実際に、Aさんも同じセリフを業者から言われたそうだ。
また、悪質業者の中には「占いサイト」や「姓名判断サイト」等を装って、氏名・誕生日等の個人情報を取得する所もあるらしい。「個人情報の流出を防ぐのは、事実上無理な部分がある」、「だからこそ、実際に架空請求等が来た時にどう対処するか、が大事」と水口結貴行政書士は解説する。

架空請求業者の脅しに屈しないことが第一
不安な時は、すぐに専門家に相談を

もしも、架空請求業者等から連絡があった場合は、絶対にこちらから業者に連絡はしないこと、個人情報は話さないこと。そして証拠となる業者からのハガキやメールは捨てないでおくこと、が大切だ。

若者を狙うアポイントメントセールスの被害が拡大している

Bさんは、様々な商品が当選するサイトに登録していた事があり、実際にいくつかの商品が当たった事もあったという。そんな頃、「アクセサリーが当たったので来てください」という電話を受けた。アクセサリー類が好きだったBさんは商品を取りに行った所、綺麗な女性が応対し、2時間に渡って商品の購入を勧められ、うんざりしたと話す。その手口は「典型的」と水口結貴行政書士は言う。このような業者は本人が「お金が無い」と言っても「分割でも大丈夫です」等と、どんどん逃げ道を無くしていくトークが巧みだ、と解説する。男性を狙うのは、男性の方が宝石に詳しくなく、鑑定書の見方等もわからないため、騙しやすいからだということだった。また、このような業者はセールストークも非常に巧みで「いつか、結婚するよね。その時に正しい結婚指輪の贈り方がある」などと言うらしい。これと同じセリフをBさんも業者から言われていた。

高額な契約総額は言わず、分割金額のみを提示して
契約への抵抗を少しでも減らそうとする業者

Aさんもアポイントメントセールスの被害に会っていた。女性からの電話で「生活総合会員サービスの案内」と言われ渋谷の事務所に行った所、女性から8時間にも渡り勧誘を受け、なんと100万円以上の契約をしてしまったのだ。Cさんは「自分なら『100万円以上』と聞いた時点で、自分なら絶対に怪しいと思う」と言うが、Aさんは、「値段は、最後の最後で言われたので、段々と洗脳されてしまったようだ…」と当時を振り返った。「このような業者は、契約金額についても総額は言わず、『月々○万円』と分割の金額しか言わない」と水口結貴行政書士は言う。それによって、少しでも消費者の抵抗を少なくしようと狙っているのだ。また、長時間の勧誘によって消費者の判断能力が落ちている時を見計らって契約を迫ってくる。そのような場所に行くと9割方は契約させられてしまう、と水口結貴行政書士は教えてくれた。
マルチ商法では、社会経験の浅い、大学生がターゲットに

マルチ商法は、本人が友人を次々に紹介し、マルチ商法に入会させてピラミッド型の組織を作っていく。勧誘された人は業者から商品を購入すると、勧誘した本人に手数料が入る仕組み。違法であるねずみ講では金銭だけが動くが、マルチ商法では商品が介在する点が違っている。マルチ商法をやっていたというEさんは、自分がやっていた「ネットワークビジネス」について話した。Eさんは健康関連の商品を売っていたが、商品はテレビでコマーシャルが流れていたり、大手の別会社が取り扱っていたこともあって「これなら大丈夫かな」と思ったという。Eさんは、仲が良かった高校時代の友人に誘われ、「あいつがやっているなら、やってみようかな」とアルバイト感覚だったそうだ。Eさんは結局、このマルチ商法を3ヶ月で止める。理由は、Eさん自身が紹介した人から、「自主規定で学生は参加できないことになっている」と知らされたためだ。それを知らされずに活動していた事に危機感を感じたからだ。

クーリングオフ制度は消費者の強い味方
商法(販売類型)ごとにクーリングオフ期間が違うので、注意を

アポイントメントセールスやマルチ商法等を契約した場合、クーリングオフ制度が適用され、一定期間内であれば無条件で解約することができる。Eさんは「自分が、いつの間にか加害者になっていた」と振り返る。「マルチ商法は特に、先輩・友人から誘われる場合が多く断りにくいのも特徴」であり、「人と人とのつながりを利用され、自分も加害者になってしまう」と水口結貴行政書士は解説する。Eさんはさらに、所得も魅力的だったこと、大学時代に何か熱中するものを見つけたいと思っていたことも要因になったと言う。「何かやりたいという気持ちがあるから、そこに付け込んだ心理作成のように思える」とCさんは感想を述べた。Eさんはまた、「大学出て、就職しても初任給はさほど高くないと聞いていた」ため、将来的な不安もあったという。「マルチ商法は『将来お金持ちになれる』と夢を売っている部分もある」、「説明会に参加して『儲かる』と言われると、つい『自分もできる』と思わされてしまう」と水口結貴行政書士はいう。また、「本当は確実ではないのに『皆が儲かる』と業者が言うのは、違法行為」であり、さらに「業者は何か問題が起こると、会社とはしては知らないこと。一部の会員が勝手にやったこと、と責任を逃れる所が卑怯な点」と教えてくれた。

なぜ、悪質商法は無くならないのか?

Bさんがこうした素朴な疑問を問うと、「1つは、日本国民の特性として人の事を信じやすい傾向があること、自分の意見をはっきり言えないこと、嫌だと拒否できないことがある」と水口結貴行政書士は指摘した。
悪質商法は日々、その手口を進化させ、新たな被害者を狙っている。悪質商法の勧誘等で困った場合には、できるだけ早く法律専門家に相談するようにしたい。

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「週刊文春」2005年3月31日

独身女性を食い物にする「結婚相談所」全手口

最近、結婚相談所が林立しており、悪質なビジネスが増えている。
高額な契約金を払ったのに相手を紹介されない、違約金が高すぎるなどの苦情が目立つ。中には、指輪との抱き合わせ販売で、サービスを中途解約させない巧妙な仕組みまで登場している。

独身時代を満喫したい現代人は20代には、あまり結婚したがらない。しかし30歳を過ぎて「結婚しようか」と思ったときは、自分が理想とする相手と出会う機会が減っているのが現状だ。
そこで「結婚相談所」の出番だ。現在の業者数は3000社を超える。各社はお見合いパーティーやインターネット、個別セッティングなどで相性の良さそうな結婚相手を探してくれる。一方、業者への苦情や詐欺まがいの被害件数も増えている。
苦情の多くは、強引な勧誘やふさわしい相手がいないことだ。契約時には、いくらでも相手を紹介するようなことを言っていながら、実際にはほとんど紹介されなかったり、パーティーに行ってもサクラばかりだったり。そして中途解約しようとすると、不当な清算金を要求される。
48万円払って成果なし。100万円のクズ指輪と抱き合わせ販売…

例えば、東京都のAさん(30才・女性)の場合、雑誌挟み込んであった相性診断のハガキを出したところ、業者から勧誘電話がかかってきた。すると、入会金の値引や「今、決めなさい」、「契約するまでトイレには行かせない」などと言われる強引な勧誘を受けた。
結局、48万円もの契約を結んでしまったAさん。契約締結後、お見合いパーティーなどに出てみたが、交際したい相手も紹介もないまま、契約金と会費を契約期間終了まで払い続けただけだった。

東京都のBさん(34才・女性)の場合は、紹介サービスが全く機能しなかったという。「インターネットで相手の顔やプロフィールが紹介されているので、その中から好みの男性との交際を申込みました。本来なら、事務所を通じて相手から返事が来るはずなのに、いつまで待っても返事がきませんでした。他にも何人かに申し込みましたが、結局誰からも返事はこなかったのです」。

国民生活センターによれば、結婚相手紹介ビジネスの相談件数は2000年度は1,610件だったが、2003年度には2,473件と急増している。この状況を受けて規制も厳しくなってきた。2004年1月1日から、結婚相手紹介サービスは「特定商取引法」の「特定継続的役務提供」の指定役務となった。(契約期間が2ヵ月間以上で、契約金額が5万円を超える場合)
しかし、この法律を知らずに悪徳相談所の言いなりになったり、業者が法の目をくぐる新しい手口を考えたりして、被害者は減る傾向にはない。
東京都消費生活相談センターには、次のような相談が寄せられていた。インターネットから軽い気持ちで結婚紹介サービスに登録したところ、業者から電話で無料相談の勧誘を受けた女性。出かけたところ、説明の途中で会員のプロフィールを見せられた。断ったところ「もう、プロフィールを見たのだから」と強引な勧誘を受け、高額な契約をすることになってしまった。解約を申し入れたら、解約料として18万円を請求された。このように「プロフィールを見せたのだから、契約しなければならない」というのは、よくある手口だ。
また、クーリングオフを申し出ても「入会時に情報提供した分は返金しない」と業者が拒否するケースも多発している。しかし、実際は契約から8日間以内であればクーリングオフができるし、中途解約も認められる。

法外な成婚料を請求されるケース

また、最近は「宝石との抱き合わせ販売」が増えているという。Cさん(36才、男性)は、エステティックや見合いサポートなどのサービスをする会員制クラブの勧誘を受けた。プログラムの中にお見合いパーティーがあり、クラブ入会前に試しに出席したところ「入会すれば、ダイヤモンドを無料でプレゼントする」と言われ、入会してしまった。しかし、見合い相手を紹介してくれるわけもないため、解約を申し出たが、実は解約できないようになっていたのだ。
なぜ、解約できないのか?
悪徳商法に詳しいエクステージ総合法務事務所・水口結貴行政書士が説明してくれた。
「結婚サービスの契約書だと思っていた契約書は、実は宝石販売契約書でした。結婚情報のように、継続的サービスの契約は法改正で中途解約できるようになりました。しかし、物品購入の場合は品物を受け取ってしまって、クーリングオフ期間を過ぎれば解約できない。
この業者は、本人には結婚サービス契約と思わせておきながら、宝石売買の契約を交わさせた。この場合、解約を申し出ると月に1,000円~2,000円位の会費だけを解約できるシステムになっている所が多い」。
最近は、30代後半~40代の女性の入会が増えているため、そこに目をつけて「医師・弁護士・公認会計士限定」といったエグゼクティブ見合いを謳う結婚相談所だ。しかし、実際に行ってみると若くて容姿がいい女性以外は、なかなか紹介もしてもらえない。「特別料金を優先的にエグゼクティブと見合いができる」と持ち掛けるが、実際は「サクラ」に過ぎない場合も多い。
「結婚相談所につきもののサクラは本当に悪質。今は男性の被害者が多いが、今後は女性被害者も増えてくるでしょう」と水口結貴行政書士は指摘する。また「特に悪質な例は、経営者が自分のところに入会した女性に手をつけるケースです。女性のデータを自由に見られるので、その情報を基に女性好みの男性を演じて、たぶらかしたのです」とも教えてくれた。
また結婚成立時に法外な成婚料を請求されることもある。金額が実の曖昧で、実情は客の懐具合を見て値を吊り上げているようだ。トラブルも多発している。

業界団体所属でも安心できない

ある結婚相談所の紹介で結婚相手が決まり、50万円以上の成婚料を払った男性は、支払後に女性と全く連絡が取れなくなってしまった。
別の男性は、相手の女性と数回のデート後、体に触れたとたんに女性の態度が一変した。そして、結婚相談所を通じて慰謝料を請求されてしまった。
結婚情報サービス業者は、いくつかの業界団体を作っているが「自主規制を尊重する」という姿勢にとどまっている。つまり、業界団体に所属しているというこが安心材料にはならない、ということだ。
契約時に登録料や入会金、会費などで高額な費用を請求され、金利の高いローンを強要してくる、中途解約金の返金をごねる、高額な成婚料を請求する…。こうしたことはたとえ大手業者でも行われている。
前出の水口結貴行政書士は、契約の時に所定の契約書がそろっているか、書かれている内容に納得できるかを確認してほしい、と指摘する。水口結貴行政書士は、「特に、書類に何か商品を売買するような事項が書かれていないかを注意しましょう。商品を勧めるところは、疑ってかかった方がいい」と教えてくれた。
真剣に結婚相手を探すのだから、真剣に契約書を読んで慎重に契約をするようにしたい。

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テレビ東京 「トコトンハテナ」2005年4月3日

「有名人に会える」などの釣り広告も登場
「マルチ商法」が若者に広がっている理由は?

マルチ商法のトラブルが学生に急増している。東京都消費生活センターによれば、平成15年度は相談増加が著しいということだ。消費生活相談員は、「若年層(学生)の相談が大変多くなっている」と言う。各大学で被害が止まらないようだ。また、商品別に相談件数をみると、健康食品が1位、次いで化粧品、食器・台所用品と続く。マルチ商法は「ネットワークビジネス」とも呼ばれ、特定商取引法では「連鎖販売取引」に該当する。専門雑誌も存在するほどだ。まず、自分が業者と契約して会員となり、自分が他の会員を紹介すると業者からボーナスがもらえるシステムになっている。但し、この「ボーナス」システムは業者によって異なるため、外からはネットワークビジネスの実態は分かりにくい。法律で禁止されている「ねずみ講」との違いは、「商品」を媒介にしている点だ。

某大学の学生に協力してもらい、マルチ商法のシステムを再現

リーダーはまず10万円で商品を購入。
その後、リーダーがまず2名を勧誘する。
勧誘された人も同じく、商品を1個ずつ購入する。
このように、次々に一人が2名ずつを勧誘していく。
会員が15名そろった時点で、リーダーには30万円のボーナスが渡される。これで、リーダーは20万円の利益を得た。
リーダーは、もしも自分のグループ内で勧誘することができない人が居る場合は、その位置に入ることもできる。ただし、その場合は改めて商品を購入しなければならない。
ボーナスを手に入れるために、リーダー自ら商品購入を重ね、結果負担が大きくなりやめられない。また、このシステムを続けていくと、いずれ日本の総人口を超えてしまうのだ。学生達は、「人を誘うのは無理そう…」という人もいれば、「10万円投資した意味がなくなるから何がなんでも捕まえる」という人もいた。
ネットワークビジネスでは、毎週のように「ミーティング」や「セミナー」が
開かれ、儲かる話が飛び交う

その場では、親戚や友人のリストを持ち1件1件に勧誘の電話をさせることも。TOPが借金をしてネットワークビジネスに投資している場合もあるため、「お前ががんばれば儲かる」という点を強調する。
ネットワークビジネスの説明会に連れて行かれると、その説明会では、イメージ的な話が多く、実際にネットワークビジネスを始めてから、支払のために借金を重ねる場合も多い。また、ネットワークビジネスのために大学で、皆からつまはじきにされる等の人間関係のトラブルにも発展する。

元マルチ商法の勧誘者がその実態を証言

「未成年取消」によって解約できたという、ネットワークビジネスの元勧誘者Aさんに話を聞いた。
Aさんは、高校時代の友人から「儲かる話がある」と電話を受け、(実際には、友人もその先輩から紹介されていた)最初に10万円を払って、ネットワークビジネスを始めた。Aさんは、この購入になんと学生ローンを紹介されていた。また、Bさんは、「自分達が入れば、上の人は儲かるわけだから、上の人は騙してでも入って欲しかったんだろう」と言う。しかし、実際には言われた程は稼げず、逆に「お金は無くなっていく一方だ」と言った。Aさんは、毎日セミナーに呼ばれ、それも大きな負担だったそうだ。「これだけ人がいるんだから」と安心してもらうための「サクラ」だったと思う、とAさんは続けた。友達関係にも気をつかわなくてはならず、「おかしくなりそうだった」と二人は口を揃えた。

合法のマルチ商法にも、規制がある

合法であっても、マルチ商法(連鎖販売取引)には当然、規制がある。例えば、不当な勧誘行為やクーリングオフ妨害行為の禁止、契約前の概要書面交付、契約後の契約書面の交付の義務等だ。また、業者はクーリングオフ制度を儲ける義務もある。
再び、元マルチ商法の勧誘者が、勧誘トークを証言

Aさんは、喫茶店に呼び出されると、先輩と自分の知人、さらに別の先輩…が待っており、なぜか、3人にさせられた。すると一人が「健康になれて、儲かる話がある」と始め「詳しくはこちらの人から…」と先輩が説明を始めた。まず「簡単に儲かる、という話があったらどう思いますか?」と興味を引き、その後は商品の成分等、難しい説明に入ったという。また、「例えば、1億円企業と呼ばれるものが、カラオケとして『命』は無ければ困る。『予防する医療』・『ガンの予防に効く』」・「ビジネスチャンス」等と言われる。「ビジネスチャンス」と言われた時点で、彼らは消費者(商品を選んで買う人)からユーザー(マルチ商法の商品を買う人)へ立場が変わってしまった。
また、勧誘者は「10万円(商品価格)で何ができますか?」と問いかけてきて、普通に暮らしていれば、そのうち消えてしまうが「このビジネスに10万円を投資して、将来のために役立てたらいいじゃないですか?」と押してくる。業者内には「誘う時には会話の主導権を握らなくてはいけない」というマニュアルもあるそうだ。
そして、「この仕事やるよね?」と、やって当然の雰囲気に飲まれてしまうのだ。そして、入会後は、このようなマニュアルの存在を知ったとしても、すっかり自分も「これでいけるでしょ」と「勧誘者」の立場に変わる。

消費者問題に詳しい法律家に聞く、ネットワークビジネスの問題点とは
自らも、ネットワークビジネスの勧誘現場に潜入したこともあるという、消費者問題の専門家・行政書士エクステージ総合法務事務所、水口結貴行政書士は、「自分のこれまでの立場を一度否定して、本人が混乱した所に、新しい教え・(マルチ商法で言えば、新しい金儲けの手段)を植え付けていく」と解説する。
学生達は「友人関係があると入ってしまいそう」、「10万円払っても30万円入ってくるなら、絶対やる」、「最初は『失ってもいい』という友人から声をかけて、ダメだったら親友でも声をかける、そして最後は親にも言う」といった感想。
「金を貸してくれ」と言われたら、即、断るとしても「金儲けなんだ」と言われたら、つい聞いてしまう、その心理に巧みにつけ込むトークには十分、注意したい。