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高齢者を狙った詐欺被害が続出。最新の手口とは

東京都渋谷区本町。住人の5人に一人は高齢者というこの町では、今、詐欺の被害が相次いでいる。
独り暮らしのAさんは、肉親を装った「オレオレ詐欺」の最新手口に騙されてしまった。その電話は、大晦日にかかってきたという。最初に「田舎だよ」と言われ、Aさんは10年会っていない故郷の兄と思い込んでしまったのだ。さらに、その人物は「丁度、仕事で上京してきた」と言ってAさんの家を訪ねてきた。多少、印象の違いはあったものの、兄だと思い込んでいたAさんはそれ以上、不信には思わなかった。そして、男は来るなり「途中でお金を落とした」とAさんに言い、心配したAさんは年金から6万円を男に手渡すと、「電車の時間があるから」とそそくさと帰っていった。その後、Aさんは故郷にこの出来事を報告しようと電話をした所、本物の兄が電話に出て気づいたのだ。Aさんは、この男に「兄さん、髪が黒くなったわね」と言ったところ、男は平然と「ああ、染めたからな」と答えたという。このように悪質商法・詐欺師は話を合わせるのもうまいのだ。

水道局職員を装い、家に上がり混んで盗みをはたらく

Bさんは、水道職員を装った二人組の被害にあった。男達は「近所に水道工事に来たついでに、無料で点検する」と言って家に上がり込んだ。そして点検が始まると、一人が「メーターを確認してほしい」とBさんを外へ連れ出した。しかし、男はメーターを見ているだけ。点検は5分で終わった。そして、部屋に戻るとなんと、財布に入れていた20万円が無くなっていたのだ。
この近所では、不審な訪問者があまりに多いため、住人は警戒して町内会の巡回にも扉を開けなくなっていた。この他、突然「あなたのアダルトサイト閲覧料が未払いです。12万円を○日以内に払ってください」などと書かれたハガキを受けとった人も。

電話口で泣いて金をせびった詐欺師

Cさんは、ある日電話に出ると電話口で相手が号泣していたという。驚いたCさんは、思わず息子の名前を言ってしまった。すると相手は続けて「今、お金を借りた信販会社の人と代わる」と言い、別の男がCさんに「(Cさんの息子に)150万円を貸した」と言う。Cさんは息子を心配するあまり、冷静な判断ができなくなってしまった。この相手を絶対に許せない、とCさんは続けた。

見ただけで家屋の欠陥を指摘。不安を煽って高額工事を勧める
40万以上の布団を甘い話と共に訪問販売で売る

Dさんは、訪問してきた業者から「お宅の屋根瓦は動いている。修理をした方が良い」と言われ、1万5千円を支払った。しかし、その後で近所の建築業者に見てもらったところ、特に修理の必要は無かったと言われたそうだ。
Eさんは、40万円以上の布団を訪問販売で買わされた。その業者は、色々な話をしてくれてEさんは、すっかり穏やかな気持ちになり、感じていた寂しさが紛れたと言う。

「自分は大丈夫、騙されない」。そんな思い込みがある人ほどあぶない

「悪質商法なんかにだまされない」と思っている人程、実はだまされやすい。それは、早めに人に相談することをしないからだ。元悪質業者だったいう男性は、「これはいいものだと、思い込ませる」、心理的な暗示を与えるのが悪質業者のやり方と言う。そのため、「相手が一人の時に話ができれば、一番都合が良い」とのこと。例えば、二人を相手に話をして、「そんな虫のいい話…」等一方から批判的な反応が出ると、一方が冷めてしまい成約しにくいからだと言う。
悪質商法の被害を防ぐ! 3つのキーワード

●うわさを信じない
警察庁の調査によれば、詐欺の電話がかかってきた人のうち、62.6%もの人が実際に騙されてしまったという。一方、ある対策をとった地域では騙された人の割合は23.4%。被害を約3分の1に減らすことができた。その町へ取材を行なったところ、高齢者がデイケア施設へ向かうバスの中では、オレオレ詐欺にあわないよう注意喚起の放送が流れ、施設でも職員から「オレオレ詐欺がはやっているので注意を」と、注意喚起のビラが配られていた。その他、病院、ゲートボール場、寺等、高齢者が集まる場所で注意喚起のビラが配布される。これは広島県警察本部が始めたものだ。高齢者と接する人が直接、詐欺の手口を伝えることで、メールやFAXでは情報が記憶に残りにくい高齢者にも、きちんと心に刻んでもらおうというのが狙いだ。
最近では、複数人数で、被害者役・警官役等を演じ分けるなど「オレオレ詐欺」の手口はより巧妙化している。肉親役は話すと正体がバレるため泣く専門だ。

□対策
詐欺の見抜き方 その1…わざと、電話口で肉親のウソの名前を言う
詐欺の見抜き方 その2…(詐欺側が肉親の名前をあらかじめ調べている場合)
肉親と関係のない話題を振る
詐欺の見抜き方 その3…(電話で警察や弁護士を名乗る場合)
所属を聞いて、電話で再確認する

その他、ケアマネージャーの助けを借りながら、離れて暮らす孫と電話で話し、近況を確かめあう取り組みも始めているという。また、オレオレ詐欺に使われることが多い「お金を要求する理由のベスト3は、
1位 交通事故の示談金…65.7%
2位 借金の返済…16.0%
3位 借金の保証人…14.8%
最新のオレオレ詐欺では、「事前に探りを入れる」ため、前の日に「携帯電話が変わったから、メモして」等、肉親の名前や情報を聞き出すための電話をしてくるケースもあるという。その他、日中、一人で家にいる主婦が狙われている。自分には関係ないと思わず、詐欺の電話が来る前提で心の準備をしておきたい。

●どうにも止まらない
ある地域では、喜劇で詐欺まがい商法を知る取り組みを行なっている。例えば、被害が続出した「床下点検」をテーマにした演劇を行なった。悪質業者は「近所の床下を無料で見ている」等、ついでを装い訪問してきて「無料」強調してお得感を煽る。点検を依頼すると、業者はあらかじめ用意してきた土等、ニセの証拠を見せてシロアリの危険性を強調する。そして、考える暇を与えず契約を急がせる。
このような劇を見た後、参加者は、今度は実際に悪質業者の撃退法を練習する。断る際、理由を言うと悪質業者につけこまれる。また、はっきり断らないのが最もいけないやり方だ。悪質業者にはきっぱりと「帰ってくれ」と言うことが大事なのだ。

●やられる前に狙い撃ち
高齢者の独居が多い地域では、高齢者に代わり悪質業者の対応をするサポート隊がいた。
例えば、不審なシロアリ業者が訪問してきて200万円の見積を出された女性。そこで、サポート隊は女性に代わり、シロアリ駆除会社数社にその場で電話による見積をとった。すると、回答は18万円弱~20万円という。悪質業者に騙される人の殆どは、商品(工事)の相場価格を知らない。そこで、このサポート隊はいくつか、被害例の多い商品について相場の値段を調べ、すぐに比較できるようにしている。また、壁のひび割れ等があると悪質業者に狙われやすくなるため、近所の業者の協力を得て家の補修も行なっている。