「環境保護」・「リサイクル」を前面に出して
金集めをする業者
群馬県前橋市の住宅街で、ひときわ目立つ大きなビル。生ゴミ処理機等を販売する業者の本社だ。荷物を運ぶ男性や高級外車に乗り込む若い女性。そして群馬県警の車両まで。周囲は慌ただしい雰囲気だった。
被害者の一人、Aさんに話を聞いた。
Aさんは、「一切、入金は無いし、業者から連絡も無い。皆、だまされたと思っている」と言う。Aさんは、「環境保護に貢献できるだけでなく、副収入も得られる」という業者のうたい文句を信じて、1年ほど前に生ゴミ処理機を購入。家庭から出る生ゴミを微生物によって土状に処理するという機械だ。購入価格は336,000円。かなり高額だが、「家庭の生ゴミは大きな収入源」・「生ゴミを処理して大きな収入を得る」・「毎月10,500円の安定収入が保証される」とうたう業者の説明を信じたのだ。業者によると、処理された生ゴミは「肥料原料」として価値が高く、有機肥料工場が毎月1万円で買い取るという。処理機の代金が33万円でも、生ゴミを工場に送るだけで、3年程度で元が取れ、その後は儲かるだけと説明した。Aさんが処理した生ゴミを業者に送ると、最初のうちはAさんの口座に業者から振込があった。また大会場で会員を集めたイベントも行われ、Aさんはすっかり業者を信じてしまった。
業者から振込があったのは、1年にも満たずそして、音信不通になる業者
しかし、2004年9月を最後に、業者からの代金の振込は無くなった。問い合わせに対し、業者は「会員が増えすぎた事による一時的な事務トラブル」と説明していた。しかし、そのうち業者が電話に一切出なくなる。何度か事務トラブルを告げる手紙が続き、最後に「契約していた業務を05年5月末まで休止する」という一方的な通知が来た。Aさんは、「処理機を買って間もない人がかなりいる。機械を戻すからお金を返して欲しい」と訴える。Aさんは、この処理機を周囲に勧めていた。
一人紹介すれば6万円、紹介した人がさらに人を紹介すれば3万円、さらに人を紹介すれば2万円…と、手数料が入ってくるからだ。業者は、会員への振込を停止する直前までキャンペーンを行い、会員を増やしていた。
調べてみると、確かに生ゴミは業者から有機肥料を作る工場へと運ばれてはいた。しかし、工場側は業者に金は払っていないという。逆に、箱詰めされた処理生ゴミを開封する代金として、100円/箱を業者が払っていたのだ。工場は数ヶ月で業者との取引をやめていた。また、ある市民団体によれば、処理された生ゴミは高く見積もっても1000円程度の価値しか無いという。さらに、生ゴミ処理機は、某メーカーから業者が仕入れていたもの。メーカーの販売価格は59,800円+消費税と業者が設定した価格とは大きな差がある。
社長が「逃げる」と言っていたころ、
新会社を設立し販売代理店の募集をしていた
業者の内部事情に詳しい、という男性から電話があった。男性によれば、社長は周囲に「逃げる」ともらしていたそうだ。それは2004年12月頃。その頃、業者は新会社を設立して、インターネット状で販売代理店の募集を始めていた。
どんな点が問題なのか、悪質商法・消費者問題の専門家、エクステージ総合法務事務所・水口結貴行政書士に話を聞いた。水口結貴行政書士は、業者が、「お金を集めるだけ集めて、計画倒産したという印象を持たれないように、休眠状態にしたり、別組織を立ち上げることで『今後もサービスは継続している』というように見せたい」のだと説明してくれた。
簡単に儲かる話・甘い話には注意が必要だ。「特定商取引法」では、不実の告知をして商品を販売した場合は、2年以下の懲役または300万円以下の罰金の規定がある。判断に迷った時には、できるだけ早く、法律専門家に相談するようにしたい。
その後、福岡まで業者社長を追って取材を申し入れたが、「この会社は関係ない。取材なら群馬で受ける」と取材は拒否された。