あなたも狙われている! キャッチセールス
キャッチセールスとは、路上等で販売目的を告げず声をかけ、商品の購入等を迫るもの。
インタビューしてみると、「アンケートに答えてくださいと言われ、4時間くらい話を聞かされ、30万円位の化粧品を買わされそうになった」人や、30万円の美顔器を買わされた人などが。中でも「絵画」に関する被害相談件数は多い。国民生活センターによると男性からの被害相談で1番多いのが、この絵画購入に関するものだ。絵画を購入した被害男性の話を聞いてみると…。
明らかになる! 路上での「キャッチ」テクニック
Aさんは、8月に路上で声をかけられ、そのまま絵画を購入してしまったと言う。しかし、絵画は購入した状態のまま部屋に置いてあるだけ。購入した商品は、ある外国人画家が書いたシルクスクリーン(版画)だ。2時間の執拗なセールストークに根負けしたという。インタビュー中、彼は「買わなくてもよかったかな…」、「後悔」と本音をもらした。そして、「絵を飾ろうという気にもなれない」と続けた。絵に興味が無いAさんが購入した絵画の金額は、4年の分割払いで48万円を超える高価なものだった。Aさんは、歩いていた所を急に女性からポストカードを手渡され、呼び止められて店内へと入ったと言う。販売目的は一切、告げられておらず、ただ「店内の絵を見るだけなので、見てみませんか?」と言われたそうだ。
店内では「買うまで帰れない」雰囲気と、執拗なセールストークが待っていた
店内に入ると、いきなりある絵画の値段の話をされたAさん。値段が高いため、購入を渋ったところ、続けてローンの話をされた。Aさんは、絵画を購入する気は無く、何度も断ったが勧誘は執拗だったと言う。Aさんが購入を渋っていると、店員は絵画の値段を下げきた。最初50万円と言っていたものを「自分の払える範囲内で」と、37万円にまで下げたと言う。Aさんは、そんな店員に不信感を抱く。そして「早く、ここから出たい」という気持ちが強くなっていった。Aさんは、今振り返って「正常な判断ができなかった」と続けた。
店員は入れ替わり、立ち代わりで様子を見るような感じで月々にやってきて、益々落ち着かないし、店内から出にくい雰囲気になったのだ。そして、ついに契約書にサインをしてしまったのだ。
「絵画商法」の被害は年々増えている。ターゲットは20代の若者
決めセリフは「特別に、値段を下げるから」。
路上で声をかけ、絵画を売りつける方法は「絵画商法」と呼ばれ、20代が狙われる。この商法は、絵を売ることから「エウリアン」と呼ばれ、ネットで様々な書き込みがされている。このため、消費者保護の完成転換から「特定商取引法」が改正され、04年11月に施行された。今では販売目的を隠して勧誘行為をすることは禁止されている。
実際に、Aさんが声をかけられたという場所へ行ってみると、街頭では揃いのジャンバーを着た女性が何かを配っている。そして、受け取った人にはしきりに何かを話しかけていた。そのうち、一人の若者が近くのビルへと案内され入っていった。ビルから出てきた男性に話を聞いてみると…。
「今、展示会をやっていて、無料で入れるのでどうでしょうか?」と言われたとのこと。この男性は絵を見るだけならと思っていたので、お金の話をされるとは思っていなかったと言った。しかも、販売目的は聞いていなかった。別の女性も、絵画の購入を勧められたと、こう証言してくれた。やはり、販売目的は告げられておらず、3時間に渡って勧誘を受け、絵画の購入を契約していた。それは、5年ローンで総額51万円を超える高額な契約だった。最初、契約をするつもりは無かったが、「特別に値段を下げるから」と押し切られたと言う。この女性の場合、最初60万円だった価格が、店員同士の相談の後、価格が37万円に下がり「これで、どうですか?」から、最後には「これでお願いします」と泣き落しに近かったという。
潜入! 絵画商法の現場
実際に、記者が声をかけてきた販売員について、店内へ入ってみる。すぐに別の女性がやってきて、「値段を無視して飾るなら、どの絵がいいですか?」と選ばせる。そして、ある1枚を選ぶと、まず「なかなか、これを選ぶ人はいない」と褒め、二人で絵の前に並んで座らされ、絵の素晴らしさを繰り返し話し続けた。そして、1時間が過ぎた所で「見ていると欲しくなると思うのですが」と切り出した。続けて「一括で100万では、出せる人もいないので」と「分割で買う人が多い」と続けた。販売員が勧めてきた絵画は「シルクスクリーン」。油絵等とは違い、何枚も複製ができる手法だ。そして、販売員はいきなり「クレジット早見表」を記者に差し出してきた。それによれば、100万円の絵画は、5年の分割払で「月々23,100円」とのこと。
「高いですよね」と言う記者に「すみません~」と言いながら「でも高さが良いんです」と勧誘はやめない販売員。記者が「買うつもりはなくて、呼び止められて入っただけで」、「気軽に入っただけだから、ゆっくり考えたい」と断ると、「ゆっくり考えると、どうしても絵はいらない、ってなるんです」、「ぜひ、がんばって飾ってみていただきたい」と執拗に続けた。2時間が過ぎた。女性販売員は、突然態度が一変。険しい表情で記者に迫ってきた。カバンの中にあるカメラを気にする女性販売員。そしてそこにスーツ姿の男性が来て「何か調べているのか?」、調べるなら事前に言うべきと迫ってきた。そこで、記者が取材で撮影していることを告げ、販売店の責任者らしき男性に、法律に違反する販売方法をしていることは問題ではないのか?と質問すると、「展示即売会と告げているので問題ない」と言い、記者が聞いていないと反論しても、「あなたは聞いていないかもしれないが、実際は言っている」と譲らない。
消費者問題に詳しい法律家にも相談が多く寄せられていた
消費者問題の専門家、エクステージ総合法務事務所、代表行政書士水口結貴さんの下には、この業者についての相談が数多く寄せられていた。その数、何と月に50件、年間では600件近くになるのだ。
「何度、断っても『今、買うように』と言われた」という被害者が多いという。
「この機会を逃すと、もうこの絵には巡り会えない」と、多くの人が言われている。水口結貴さんによれば、長時間に及ぶ勧誘で大幅な値下げを言われ、契約してしまった人が多い、とのことだった。
販売員は購入を勧めるときに、「非常に手間のかかる技法で、お金も時間もかかる」というが、後で調べてみると実際はそうでも無い、ということがわかるのだと言う。
実際に、被害者男性が持っていた絵画(100万円で購入)を査定してもらったところ、「ほぼ額代」という回答だった。
国民生活センターによれば、「絵画商法」による平均購入価格は100万円を超えている。一般の人が絵画等の美術品の値段や品質・価値を正確に見積もることは殆ど不可能だ。業者は販売目的を告げずに、絵画を販売することは一切行なっていないと言うが、やはり自衛と、万が一購入した場合は、クーリングオフが欠かせない。