「必ず上場するので」と嘘の説明で、主婦を
狙う未公開株詐欺が横行
ある被害者に話を聞くことができた。「株が上場すれば2倍から3倍になるから」と言われ、4株で165万円を支払ったという。
しかし、消費者問題に詳しいエクステージ総合法務事務所・代表行政書士の水口結貴さんは、「未公開株が、市場に出回ること自体が不自然」と指摘する。
そこで、我々は上場予定会社を訪ね、株について取材を行なった。
上場予定があるのか?という質問に対して、電話に出た女性は「担当でないのでわからない」と言い、担当者を出してくれるように言うと「担当者は今、いない」、いつならいるのか?と重ねての問いにも「わからない」とそっけない対応。今、急増する未公開株詐欺の実態が明らかに。
空前の株投資ブームの中、
何も知らない一般投資家をねらった詐欺も横行していた
一般投資家は、知識が無いため騙されやすく、しかもどんどんターゲットが入ってくる、詐欺をねらう側にとっては「おいしいマーケット」になっている。そのため、詐欺をする人間も集まってくるのだ。
それまで、株取引を一度もやったことが無いという被害者夫妻に話を聞いた。知人から「元証券マンに金を預ければ、金を運用して利益が出る」と説明を受けた。この被害者は、最初100万円を出資→10万円の配当金を手に入れる。そして、また100万円の投資に対して10万円の配当。それが3回はあったそうだ。元証券マンの事務所も専門家らしい雰囲気で、すっかり信用してしまったと言う。結局、100万円を3回投資して、都度10万円の利益を得る。
そんな中で、元証券マンはこれを上回る「儲け話」を持ちかけてきた。それが、未公開株の購入だった。「投資額が最低でも10倍になって戻ってくる、間違いない」と言われたそうだ。それまでの儲けがあったため、有頂天になってしまい貯金を全部出してしまったのだ。その額800万円。その後、800万円と共に元証券マンが姿を消し、1円もお金は戻ってこなかった。
未公開株に関する被害・相談は急増している
東京都生活相談センターによれば、未公開株に関する相談は昨年度の5倍、400件にのぼっているという。未公開株とは、株式を市場に公開していない会社の株のこと。未公開株が新規に上場される場合、市場価格が一般公募価格の2倍~3倍に跳ね上がることも珍しくない。例えば、A社の場合、一般公募価格(1株)は76万円だったが、上場後の初値は347万円。仮にA社の未公開株を1株持っていて、この時点で売却したとすれば271万円という大きな利益が出ることになる。
実際には「存在しない未公開株」を使って、金銭をだまし取る
実際、未公開株を手に入れるのは大変難しい。多くの場合、実際には存在しない未公開株をあたかも実在しているかのような虚偽の説明をして、投資家を騙しているのだ。
しかし、中には実際に存在している「未公開株」を使ったトラブルが発生していた。
被害者の話を聞いてみると…。Aさんのところに、全く知らない会社から電話があり、「絶対に得だ」という説明をされた後、会社パンフレットが送られてきたという。そのパンフレットには、未公開株の魅力が詳しく説明されていた。さらに、その後「新規上場予定株情報」といったパンフレットも送付されてきた。そこには、実在するある会社名と魅力的な投資プランが記載されていた。
○譲渡価格(1株)=35万円
○初値(予想)=80万円
株取引に詳しくない人が見ると、まるで45万円の利益が約束されているようにも見える内容だったと言う。そのタイミングで、さらに業者から勧誘の電話があり、「株が上場すれば、2倍~3倍になる」と言われ、Aさんは4株=165万円を購入した。しかも株券は数回に分けて送付され、宅配便(代金引換)で現金払い、もう1社は、郵便局から電信為替で払い、後日株券が送られてきたという。
しかも、支払後に「上場が1年延びる」と言われ、そのままずるずると現在に至る。
消費者問題の専門家に、未公開株詐欺の問題点を聞いた
Aさんは、相談のため消費者問題に詳しい、エクステージ総合法務事務所・代表行政書士 水口結貴さんを訪ねた。Aさんは、実際に送られてきた株券を持参し、水口結貴さんに見てもらったところ、「未公開株が市場に出回ること自体が不自然」という指摘を受けた。被害者Aさんは、業者から「上場予定が狂ってしまうので、発行元に問い合わせはしないでほしいと言われていた」と告げると、水口結貴さんは「発行会社自体も詐欺目的で、このような話をでっち上げている場合も考えられる」と説明してくれた。
さらに続けて、未公開株の不自然な流通に疑問を投げかけた。なぜなら、未公開株には「譲渡制限」がかけられていることが多いからだ。実際に、Aさんが購入した会社の登記簿を見てみると、「株譲渡には取締役会の承認が必要」と記されている。つまり、Aさんが株券を所有していても、会社側が株主として認めない可能性が高い。
登記簿に記されているこの会社の本社を訪ねてみたが…
平日の昼間にも関わらず従業員がいる気配が無い。次にこの会社のホームページを見ると、新着情報の日付は3年前。この会社の代表電話に電話をかけてみると「上場予定はすぐにはないと思う」と、すぐに上場予定がないと認めた。
本来、限られた銘柄しか証券業・証券会社は未公開株を扱ってはならないし、また、経営内容が不透明なことも多いため、日本証券業教会では未公開株の投資活動を原則、禁止している。
未公開株を取り扱うには、証券業登録が必要であり、登録を受けていない場合は証券取引法違反になると金融庁監督局の証券課長は説明する。
対して、株券の販売業者は「未公開株は、有価証券と解釈していないので違法な営業をしているつもりはない」と説明するが、悪質業者に騙されないためにも、安易な儲け話には十分、注意したい。そして、自分一人で判断がつかない場合は、早めに法律家に相談を。