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ネットワーク社会に潜む罠(後編)

ネット社会。確かに便利だが、限りなく怪しい世界。そんな世界の「罠」=「闇」にはまってしまった被害者を紹介するほか、ネットワーク犯罪から身を護る秘策も紹介する。

前回、アドバイザーとして、ネットワーク犯罪から詐欺犯罪まで詳しい、エクステージ総合法務事務所 代表行政書士の水口結貴さんにお越しいただいた。
水口結貴さんは、悪徳商法問題のスペシャリストであり、これまで4000件以上の消費者トラブルを解決。最近では、新しい詐欺行為の撲滅に取り組んでいる。
●1人目の相談者  杉本香織さん(仮名)
杉本さんは数年前に利用した懸賞サイトから個人情報が流出し、見知らぬ業者から高額請求メールを受けていた。そこには脅迫ともとれる脅し文句があった。
さらに、水口結貴さんは悪質高額請求サイトの例を紹介してくれた。それは「支払をしないなら、何度でも電話する」という新手の架空請求だった。

●2人目の相談者  大野雪枝さん(仮名)
大野さんが引っかかったのは「ブライダルモデル」を餌にしたネット求人広告だった。ネットを見ていたら「ブライダルモデルのバイトをやらないか」という求人広告が出ていて、応募したという。
大野さんは、「実際に面接を受けた会社が怪しい」という。面接ではウォーキングテストなどを受けたということだが、2日後に業者から電話あり「素人さんなので、歩き方がぎごちない。うちはプロダクションもあるので、所属しませんか?」という話を切り出された。
プロダクションの登録料は20万円だった。半信半疑でネットを見たら、同じような体験を多く見たという。実はこのプロダクションは、ネット上で「怪しい」と噂になっていた。彼女はプロダクションに断りの電話をしたが、業者から「何やってんだ!」と怒鳴られた、とのこと。大野さんは、「履歴書なども提出しているので、家も知られているし…。とても怖くなった」とその時の気持ちを話してくれた。

消費者問題の専門家に対応方法を聞いた
水口さんに、こうした場合にどうすればいいいか、を聞いてみた。「こういう場合、実際に受けてみると一度は“オーディションだ”と言って、わざと落とす。そして電話をして、モデル事務所への登録料を取る所が、けっこうある」と教えてくれた。

業者のホームページを見て検証することに
実際にホームページを見てみると、「登録料、レッスン料は無料」と書いてあった。これは違法にならないのか? 水口さんは、「ギリギリ、言い逃れができるような書き方になっている」という見解だった。

次に会社のホームページを検証してみた。すると、所属モデルのプロフィールが無い。また、掲載されている写真も何枚かは同一人物らしき人が別名で登録されているなど、怪しい点があった。また、ブライダルショーもショーというより、記念撮影のようでチープな点が怪しく思われる。
実はスタッフが潜入して、このプロダクションに面接を受けていた。スタッフに様子を聞くと、威圧感があったという。また携帯電話の電源を切らされた、バッグを預けさせられた、プロダクションの信頼性をアピールしていた、という。
また、ブライダルショーのVTRは、いかにも素人がやっているようで、大したものには思えなかった、という。そして2日後、面接結果の報告電話を受けた。それは「すぐ仕事をするのは無理だが、きれいなので専属モデルということも考えられる」という。スタッフが登録料の有無を尋ねると、「登録料はいらないが、レッスン代はかかる」という。レッスン代が「8ヶ月で、10万円」。「今、仕事をしていない」という理由でスタッフが断ると、業者は続けて「甘えついでに、お母さんに10万円借りてレッスン受けてみて」と言った。

水口結貴さんの事務所にも、全く同じ相談が何件も寄せられていて、「どうも、レッスン料を取ることが目的のようだ」という。
法律的に違反にならないのか?との質問には、「これだけで違法性を問うのは難しいが、最初に言っていることと最後に言っていることが違う」、「こういう場合、契約は無効になる」と教えてくれた。

●3人目の相談者  永田幸彦さん(仮名)

3人目の相談者は、「家賃収入で月100万円以上?」という話に乗ってしまった永田さん。
彼はアパートを建設したり、購入して賃貸に出している。こうした物件は、インターネットの不動産検索サイトで探して契約している。しかし手付金を払ったにも関わらず、物件の引き渡しがないまま今に至っている、という。結局、契約は破談になったが、手付金の返金がないという。

1億7千万円のアパートだが、利回りが「9.69%」。今なら「4%~5%でもいい」と言われているらしい。
つまり、この物件から年におよそ1700万円の収入が得られる、ということになる。
購入を希望した永田さんは、平成19年9月に不動産売買契約を済ませた。売主に手付金を支払い、仲介業者にも手付金を支払った。ここまでは何も問題はない。
ところが、契約から半年たってもまだ解決していない問題点があるという。それは当初、「家賃保証をする」と言っていたのに「やはり、家賃保証はできない」という話なったことだ。当然、買主(永田さん)が「話(契約)が違う」と言うと、相手方は一転「1憶1千万円にするから、買ってくれ」と言ってきた。
永田さんはこれを断る。そして、銀行からの融資も受けられなくなった。

水口結貴さんに何が問題なのかを聞いたところ、「手付金は、ある一定の期間内であれば、手付金を放棄することで契約を解除できる。しかし今回の場合は、何の連絡もないまま時間が経ってしまったので、逆に違約金を払って、解約をしなければならなくなった」ということだ

その後、仲介業者同士で話を進めるように何度も伝えたが、何も進展がないまま、現在に至る。
水口さんは「これは、もう早く相手に解約を求めるしかない」と言う。
「直接、買主と話をしてはいけないのか?」と聞いたところ、「原則としては、仲介業者が入っている場合は仲介業者を通すもの」と教えてくれた。さらに、「相手は、裁判まではやってこないだろう、と甘くみているのかもしれない」と指摘する。さらに、「永田さん(買主)は何も悪くないのだから、自分の権利をきちんと主張した方がいい」とアドバイスもしてくれた。
いずれにしても、売主と買主、それに双方の仲介業者が一同に会して、解決に向けて話し合いをしていくことが大切だ。

●振り込め詐欺への対策は?
ネット社会の産物、ともいえる「振り込め詐欺」への対策を水口さんに聞いたところ、「携帯で、振り込め詐欺の指示をする所が多いので、ATM付近では携帯電話の使用禁止の呼びかけをしている所が多いですね。また、悪用されている口座が検索可能になっていますから、これも活用してください。さらに、サングラスや帽子で顔を隠している状態でATM操作をすることの禁止も検討されています」と、教えてくれた。

こうした注意を忘れないようにしたい。
また、東京都では、2008年6月末の時点で、2461件、被害額は約38億円に昇っている。そして、被害者の約70%以上が60才以上だ。「振り込め詐欺」という言葉は知っていても、具体的な手口を知らないことが被害を増やしている。そこで東京都では、様々な場を使って振り込め詐欺の手口を紹介している。