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「遺体ホテル」が増えている

現在、東京都では年間およそ11万人が亡くなっている。しかし火葬場の数は増えていないため、遺体の保管場所に困る遺族らが増えている。こうしたニーズに応えて、遺体を一時的に預かる施設(通称・遺体ホテル)の利用が多くなっている。しかし施設への法的規制はなく、近隣住民の反対運動に発展したケースも見られる。

火葬場が足りず、順番待ち
厚生労働省によると、死亡数は年々増加している。2015年は全国で約130万人が亡くなった。しかし火葬場の数は全国で約4千カ所に留まり、20年間で半減している。(2015年度末)。
都内に限ってみれば、火葬場は23~28カ所で推移している。都内の葬儀関係者によれば、「10年前は1~2日程度で火葬できたが、現在は3~4日待ちが当たり前」とのことだ。
そこで、「火葬待ち」の状態が長くなり、遺体の保管が難しくなっている、という現象が起きている。

周辺住民の理解が得られにくい
2014年9月、川崎市の住宅街に工場を改装してオープンした遺体保管施設がある。同年6月、計画に驚いた住民が「反対の会」を結成した。経営会社の竹岸久雄取締役(41)によれば、「棺にドライアイスを入れて保管し、抗菌仕様の壁紙も使っている。衛生面に問題はない」という。住民向けの説明会も行っている。さらに見学希望者は施設の内覧もできる。しかし周辺住民との溝は埋まっていない。
因みに、安置施設に法的規制はない。同社は、遺体保管施設を「倉庫」として市に届け出た。

専門家が指摘する問題点とは
近所のパート従業員の男性(68)に聞くと、「遺体が近くにあると思うといい気分はしない。必要な存在だと思うが、住宅が密集する場所に建てるべきではない」と言う。
終活の専門家で、葬儀事情にも詳しい水口結貴行政書士は「施設を追い出すだけでは将来の多死社会に対応できない」と言う。さらに「遺体ホテルに関する法的規制がない点には問題もある。衛生管理の基準を設けるなど質を確保するためのルール作りが必要だ」法規制の必要性等を指摘した。