高齢者を狙った悪質商法が後を絶たない
駅前で無料景品を配り、会場へ誘い込む
高齢者を狙った、「催眠商法」の現場に密着した。
悪質業者は、駅前で「無料の景品」を配る。そして、受け取った高齢者を会場へと誘い、そこで高額な布団等の商材を売るのだ。
悪質業者の手口を知るため、販売会場にカメラが潜入した。業者は数名で会場に乗り込み、「この商品で『ドロドロ』の血を『サラサラ』に変える」など、高齢者が気になるポイントをうまく、セールストークに入れ込んで気を引く。
布団の説明をするときには、「この布団を使えば、痛かった足が痛くなくなる」等、健康への不安や薬事法を無視した説明をしていた。この布団の価格、なんと58万円以上もする…。
悪質商法販売会場へ潜入! その手口とは
横浜駅前。そこではある業者が、高齢者に景品を配っていた。20人ほど集まると、業者は高齢者を促して移動する。前後を業者を思われる人間が挟んでいる。そして数分歩いた先の飲食店へ。
同時にこの業者の車を追い、会社へ。ある私鉄沿線の雑居ビルの1室。窓から販売目標が透けて見える。1ヶ月の売上回収目標「1,216万円」。その横には、説明会に集まった人数と1日あたりの販売本数が。
別の日、この業者は今度はJR西荻窪駅前にいた。取材時、すでに10人以上の高齢者が集まっていた。スタッフが近づいてみると…。「記念品ですから、もらってください」と声をかけながら、景品を配っている。景品をもらった後、業者に言われるがまま、行列の後ろに並ぶと…。「使って気に入ったら電話で注文してくれればいい」との声。
商品(サポーター)の説明の後、すぐに商品を渡すわけではなく、「サポーター引換券」を配る業者。
そして、このあたりは同業者(病院・商店)も多いから、似たような物を扱っていると怒られてしまう…と理由をつけ、近くに用意しているという会場で商品を渡す、と高齢者達を誘導し始めた。そして、ある店舗の前で、品物を配るので、わかるように券だけ持っていて、と指示する。その上で「出入りは自由」と安心させ、店内へと高齢者達を入れていく。
奥の座敷には「試供品キャンペーン」と書かれた幕が。そして説明役が登場。あくまでも宣伝で、売ったり買ったりはできないと強調してからサポーターを配る。その後「大腸ガンの予防のために作った」腹巻きと、その腹巻きにも使用されていて、かつ「まだ、どこにも売っていない」という「磁石」の宣伝を続ける業者。業者は指圧で有名な人物の名前や実際のCM例なども挙げながら、説明を続ける。さらに難病の患者を数多く救ったことなど、いかに商品が素晴らしいものであるかを続け、有名人の協力を得て国が認可した新しい商品が発売されると言った。さらに新商品の説明と高い治療効果を説明する業者。曰く、特別な磁石が使われており、様々な病気に効くという。
ようやく布団のパンフレットを取り出す業者
入れ替り立ち替りで、布団の効能・効果を宣伝、観衆をあおっていく
奥にしまってあった布団をとりだし、かぶれないように24金加工をしている等と言ったうえで、「布団ではなく『治療器』だ」と強調する。曰く、5時間以上使えば、「サラサラの血液に変わるという事で、認可をもらっている」、「高価な磁石が88個もついているからね~」と、布団の価値を業者は煽る。そして、やっと「58万8000円」という価格が出された。とろこが、今、会場にいる人だけは「20万円の値引き」があると続けた。この時は、3人が購入を決めた。しかし「病気が治る」と説明された布団、効果が本当にあるのだろうか?
後日、業者が会場で名前を出していた指圧で有名な人の学校に話を聞いてみたが、「指圧で糖尿病患者を数百人も治したという話は聞いたことがないし、データも無い」。また、「布団の開発にたずさわったり、磁気治療の布団を作ったことも無い」との返答だった。また、業者が例に出していた腹巻メーカーのCMにも出演したこともなく、顧問にもなっていないという。
さらに、東大医学部教授に聞いてみたが、磁石の周り数センチに磁気を出すことはあっても、それが高血圧等の疾患を治療するまでには至らないだろう、という回答だった。
消費者問題に詳しい法律家に、問題点を聞いた
こうした高齢者をねらって高額な商品を販売することの問題点について、悪質商法に詳しい、エクステージ総合法務事務所・代表行政書士 水口結貴行さんに話を聞いた。
悪質業者の車両登録証を見て、水口結貴さんは、2つの会社はグループ会社の関係にあると教えてくれた。このグループは、元々が関西で発祥し、幹部を関東に派遣しながら、拠点を次々に作っているとのことだ。また、この業者は大阪に本社があり、強引な手法が問題になっていた。そのためか、売上は激減していて、「もめたくないから止めた」という、元従業員の証言も得ることができた。今も、この業者は首都圏各地の駅前で、高齢者をねらっている。高齢者をねらった悪質商法の撲滅を願ってやまない。