電話だけでなく、直接会ってまで金を取る
新たな架空請求の手口とは
架空請求と言えば、電話で様々な理由をつけ、言葉巧みに金を振り込ませるもの…と思い込んではいけない。架空請求の被害を受けたAさんに話を聞いた。先月、Aさんに「全国情報管理教会」と名乗る女から電話があった。女は、メンバーズクラブから問題が発生している会員にかけていること、このまま放置すると裁判費用を含めて数百万円の請求がくる、等と身に覚えの無い話で高額金額を請求された。女は続けて「そうなる前に少しでも負担を抑えたいと思って」電話をしたと言う。Aさんは、5年前まで旅行のメンバーズクラブに加盟していた。女は、Aさんが会費を滞納していて、メンバーズクラブが訴えていると言う。女は、直接会えば、数百万円の請求を少しでも減らせると言った。全く身に覚えのなかったAさんは、この女と会うことにした。女は指定した場所を伝え、身分証と印鑑を持参するように指示。Aさんが理由を尋ねると「情報開示を行う時に本人確認をするため」・「開示依頼書に印鑑を押してもらうため」と説明した。
以前の契約を引き合いに出して、ありもしない裁判話で不安を煽り、
高額な費用を請求する
指定された場所に行くと、女が現れ、裏通りのビルへと案内する。そして、2階へ。そこは間仕切りされ、小さなブースになっていた。10分程で、相談員を名乗る20代後半の男が現れた。
男は、Aさんに「以前メンバーズクラブに入っていたか、または呼び出されて商品を買わされた事があるか?」を確認。Aさんが、以前はメンバーズクラブに入っていたが、退会手続をしたことを告げると、男はいきなり「相談を受けるには本人確認が必要だ」と言う。Aさんは、「本人確認の前に、こちらの確認をしたい」「どんな団体なのか?」と説明を求めると、男は「業界内の団体」と曖昧な返答。何の業界か?と重ねて質問すると「メンバーズクラブ業界」と言う。重ねて「前に入っていたメンバーズクラブからクレームがあったのか?」と質問すると「たぶんクレームが来たから、こちら連絡した」とあやふやな返答をする。「たぶんって…」と突っ込むと、「個人情報の関係で詳しい話は伝えてもらえない」とごまかす。反論するAさんに対して、男は執拗に身分証と印鑑の提出を迫り続ける。なぜか?
悪質な2次勧誘について、専門家に聞いた
悪質商法・消費者問題の専門家、エクステージ総合法務事務所・代表行政書士 水口結貴さんによれば、このような手口は「2次勧誘」と呼ばれ、以前の契約を引き合いに出し、「高額な未納金がある、裁判が起こされているが、それを『示談』という形で手続をする」等と、嘘の説明をする。そして、そこで新たなローン契約を組まされるのだ。水口結貴行政書士は、Aさんに新たなローン契約を組ませるために、身分証と印鑑にこだわったのではないか、と指摘した。
悪質架空請求業者の実態を掴むため、取材班が張り込みをした結果は…
1日目。昨日Aさんが連れて行かれた会場名が書かれたプレートは、すでにドアから外されていた。管理している不動産会社に聞くと、この部屋は、2階・3階を1人の借主が別の会社名で契約をしているとのこと。但し、ビルの入口には2階・3階ともに会社名は表示されていない。3階から降りてきた男が近くのコンビニで払込をした。その金額71万円。1ヶ月分の複数の携帯電話料金だ。その後、動きは無かったが、7日目。
2階の電気がつき、部屋へ向かうとまたもや「浜松町会場」の張り紙が。取材を申し込もうと中に入ると誰もいない。掲示されていた内線番号にかけてみると、「担当がいない」ため、改めて来てくれ、との回答。いつ来ればいいのか?と尋ねると、担当者から電話させるので…と電話番号を聞かれる。しかし電話が無く2時間。その時、複数の女がビルから出てきたため、後を追う。その中にはAさんを迎えに来た女も居た。しかし、女はビルから出てきたことも、関係者であることも認めようとはせず、立ち去った。
翌日、改めてビルを訪ねてみると2階・3階ともにモヌケの空のよう。
業者はなぜ、逃げたのか? 再び、専門家に聞いた
そこで、再び行政書士・水口結貴さんに聞いた。「こういう二次勧誘に『使われやすい場所』というのがあるので、また悪質業者が戻ってくる可能性もある」ものの、「二次勧誘を行うグループは限られているため、同じメンバーで場所を変えて、同様な手口を重ねる可能性がある」と説明してくれた。
身に覚えのない請求が来ても、業者の説明を鵜呑みにせず、できるだけ早く法律家に相談するようにしたい。