電話では、全く販売目的を告げずに呼び出して高額商品を売る「デート商法」。
その実態は?
番組女性スタッフの携帯に突然かかってきた電話。電話に出ると、男は「おめでとうございます。懸賞のネックレスが当選しました」と言う。懸賞に応募した覚えの無いスタッフが通知された番号にかけ直して「ネックレスが当たったので、店に取りに来てください、との事だったのですか、お金はいらないのですか?」と訪ねると、業者は「全然いらないです」と明確に答えた。
3日後、スタッフは待ち合わせの場所に向かう。電話の相手は、渋谷にあるブライダル関連の会社に勤めているということだった。現れた男性販売員に連れられて、歩いて5分程という店舗へと向かった。道すがら販売員はスタッフに対して「絶対、モテますよね?」等と、ほめ続ける。歩いて15分、ようやくショールームに到着。そこは大通りから外れた住宅街の一角にあった。店内は大音量で音楽がかかり、数多くの宝石が並ぶ。奥には広いフロアがあり、若い男性が女性販売員と話をしている。
懸賞品を受け取るだけのはずが、いつのまにか
「自分がデザインした」高額ジュエリーの売り込みに
男性販売員は、女性スタッフを座らせると懸賞で当たったというネックレスを出した。販売員はスタッフの首にネックレスをかけると、おもむろに「ジュエリーにどんなイメージがありますか?」と話してきた。そして「ジュエリーは【縁ときっかけ】のもの」、であり「自分自身がすごく好きな商品がある」、「今、世界一輝くダイヤモンドだ」、「せっかくだから、色々とお見せします」と、たスタッフが話を返す間も無く続け、巧みにダイヤ販売の話にして、どんどん高額商品を出してきた。
そして、オリジナル商品だというダイヤの指輪を勧めてくる。そして、スタッフが「買う」とも何も言わないうちに、電卓を叩き「月々、35,700円」と勝手に分割払いの提示。この指輪、総額は何と214万円。スタッフが購入を断ると、上司と思われる男性販売員が近づいてきて、まずスタッフを「かわいい」とほめる。
商品を変えながら、販売員の執拗な勧誘は続く
分割払の金額を強調して、総額(高額品)から注意をそらす
販売員は、商品を変え「ネックレスとリング」を見せ、「どっちがいいですか?」と別商品の勧誘に移った。「会社でつけやすいのはネックレス」と答えたスタッフに対し、別なネックレスを出してきて、首にかけ「印象がすごく変わります」とまたも褒める販売員。上司も「ピアスをサービスでつける」と販売員へ応援トーク。上司は続けて、スタッフがつけたネックレスを「特別品」、「特注中の特注」等と希少性を強調する。二人の販売員は、あくまでも分割払の金額を強調して、総額が非常に高価であることから注意をそらそうとする。実は、スタッフが勧められたネックレスとピアスは総額で105万円という非常に高価な物。しかし、総額は一切、話には出てこない。スタッフが、「今日決めないといけないのか?」と尋ねると、上司の方が「1週間考えても、1年考えても決める時は一瞬」と、暗に今、決断するように返してくる。スタッフが続けて「皆、その場で買うのか?」と質問すると上司は再び「9割くらいの人は買う」、「商品が目の前にある時に決めないと」とやはり決断を迫る返答。スタッフが、そもそも懸賞品を取りにくるつもりで「買うつもりではなく来た」と言うと、上司は意外にあっさり、「うちはデート商法はやっていないので」とスタッフを帰してくれた。しかし、店を出たのは来店してから何と5時間後。因みに懸賞で当たったというネックレスは、銀メッキの物。専門家によれば100円程度の物とのこと。
そして、その後も販売員から1日1回はスタッフに電話がかかってきて、執拗な勧誘が続いた。
業者販売店に密着。すると、次々に若者が…
喫茶店に販売員と同席までした、男性客に聞いた
店舗から、男性客と女性販売員が数組出てくる。いずれの女性販売員も笑顔たっぷり。5時間のうちにおよそ、10組の男女が出てきた。そのうちの1組、女性販売員が男性客と一緒にどこかへ向かう。そして、二人は喫茶店へ。食事の間も笑顔が絶えず、趣味の話等、まるで恋人同士のような会話が繰り広げられる。その後、女性販売員は、男性客が駅のホームに行くのを見届けた。勧誘を受けたAさんに、宝石販売の勧誘があったのか聞いてみた。Aさんは「ウエディングプランナー」と名乗る女性から電話があり、「一度、お店に来てください」と言われたとのこと。Aさんは断りづらく、来てしまったと言う。そしてAさんは8時間に渡る勧誘を受け、宝石(アクアマリンネックレス)購入の契約をしていた。総額42万円。電話では販売目的は告げられなかったそうだ。価格が適正なのか、百貨店で同じカラット数のアクアマリンの値段を見ると、36,000円。自分が契約した10分の1以下の金額で売られているのを見たAさんは愕然。解約をするために、業者に電話をかけるAさん。解約したい旨を告げると、女性販売員は意外に「クーリングオフ期間中でキャンセルできるからいい」と意外にあっさりした対応だった。しかし、女性販売員はAさんを説得し続け、30分後には上司が代わりにAさんと話す。結局、解約することはできたものの、約1時間にも渡って理由をしつこく聞かれた。
デート商法の被害者も愕然とする、商品価値
スタッフは、デート商法の被害にあったとう20歳の女性(Bさん)を訪ねた。昨年10月、販売目的を告げずに電話で勧誘され、ダイヤモンドのネックレスと買ってしまったという。買った品物は、5年ローンで総額約65万円という高額な物。Bさんは、学生だからそんな高額品は払えないと言ったが、業者は「うちは、ローンの期間が長いから、月々の支払が安くできる」と勧めてきた。断れない雰囲気だった、とBさんは続けた。Bさんは5時間にも渡って勧誘を受け、心理的なプレッシャーから購入してしまったと続けた。Bさんが買ったネックレスを専門家に鑑定してもらうと、結果は小売価格で15万円~20万円という回答。この結果にBさんはショックと同時に、悔しさが隠せない。
元販売業者の社員が明かす、デート商法の手口とは
スタッフは、この業者に勤めていたという元社員から話を聞くことができた。主な仕事は、名簿業者から入手した個人情報を元に電話をかけることだったと言う。「販売方法が特定商取引法に違反しているから危険と思っていた」と証言する元社員。手口の1つが「とにかくほめること」。「ほめる所が無い人でもほめる」と言い切る。そして、元社員は契約後に客と食事をする理由について、「一人で、店を出てそのまま帰ると、冷静になってしまい、『しまった』と契約を後悔してしまう」、だから「それを防ぐために、さらに喫茶店や食事で色々と話す」、そして「『解約する』という電話がしにくくなるようにする」と 語った。国民生活センターによれば、デート商法の被害相談件数は年々増え続け、2003年には2000件を超えている。別の男性Cさんは、やはり、電話で販売目的は告げられずに呼び出され、年収300万円にも関わらず、総額200万円のダイヤネックレスを購入してしまった。帰宅後、Cさんはすぐに解約の電話をしたという。
消費者問題に詳しい法律家に聞いた デート商法の問題点は
このような販売は、いわゆる「デート商法」と呼ばれるもの。デート商法とは、販売目的を告げずに、異性に好意を抱かせるような言動で高額商品を販売する手法だ。被害者の多くは20代前半の若者だ。
悪質商法に詳しい、消費者問題の専門家、エクステージ総合法務事務所・水口結貴行政書士は「クーリングオフ制度は消費者の権利」であって、「理由に関係なく一定期間内は無条件で解約ができる」と教えてくれた。水口結貴行政書士は続けて、「悪質業者が何か、理由をつけて解約を妨害すれば『クーリングオフ妨害』で、特定商取引法違反になる」という。このようなクーリングオフ妨害をした業者には罰則規定もある。さらに2004年11月、改正特定商取引法が施行され、販売目的を隠して個室・店舗等に誘い込んで商品販売の勧誘をすることが禁止された。
販売目的を告げずに、消費者を呼び出していた
業者を直撃取材
当番組のスタッフに、業者から電話があった。その電話で販売目的を告げず、違法な勧誘を続ける宝石販売業者に取材すると、業者はあくまでも「一販売員のやったこと」と会社ぐるみの関与を否定。しかし、取材中に番組女性スタッフに2ヶ月間に渡り、勧誘を続けるこの業者の販売員から電話がかかってきた。そこで、取材中だった幹部社員が直接、販売員と話すことに。自ら、電話相手の販売員に「販売目的を告げずに、電話をしているのか?」と詰問。その後、幹部社員と同席していた別の幹部社員が一時退席し、また戻ってきた。スタッフに電話をかけてきた販売員は課長だったが、降格させたと言う社長。その後、業者は自らの非を認め真摯な態度に一変。しかし、なお会社としての責任は一切ないと主張する。
こんなセリフで、かかってきた電話には用心しよう
デート商法に相手を呼び出す、巧みなトークとは
例えば、デート商法の業者はこんなセリフで電話をかけてくる。
「今、お店の案内を兼ねたアンケートをやっている」ので、「よかったら、お店に来てください」。販売目的は一切、言わない。
デート商法は、「未成年取消」ができなくなる、新成人が狙われることも多い。甘いトークに惑わされず、対応に困った時にはできるだけ早く、法律専門家に相談するようにしたい。