法の網をくぐり、個人事業主を狙う
「高額」・悪質な電話契約トラブルが増えている
普段「デジタル化をしないと、今後、電話器が使えなくなる」等と、嘘の説明をして高額な電話リース契約を結ばせる悪質商法が増えている。
被害者のAさんは、業者から「電話リースしかない」と言われて信じてしまったのが、バカだった…と悔しそうに話す。Aさんは、都内で鍼灸院を営んでいる。
去年6月、業者は突然、Aさんが経営する鍼灸院を訪問してきた。そして、「NTT関連の者だ」と名のり、こう話した。「今のままでは、この電話機が使えなくなりますよ」と言った。業者は続けて、「NTTが光ファイバーやADSLの工事を行なっている。だから電話が鳴っても切れたり、繋がらない」と言い、続けて「電話機を代えないと改善されない」と言って、リース契約書へのサインをAさんに求めてきた。
ADSLや光ファイバーとは、電話線などを使った最新の高速通信のことだ。男は、こうした単語を巧みに操って「今、使っている電話では通話ができなくなる」、「代わりに自分の会社が電話機を貸すので、リース契約をしてほしい」ともちかけたのだ。
「やっぱり商売がらみで、デジタル化や高速化と言われると…」「通じなくなるなんて言われると、やっぱりひっかかちゃいますね」とAさんは言う。そして、Aさんは結局、7年間で約35万円電話機のリース契約を結んでしまった。しかし、NTTによれば、高速通信で電話機が使えなくなることは無いという。男の話は全くのデタラメだった。
被害の中には1000万円以上の電話リース契約も
東京都だけでも、今年上半期のトラブルは282件に昇る。2年前と比べると実に2倍の数だ。被害者の殆どは、Aさんのような中高齢者だ。悪質業者は「高速化」や「光ファイバー」と言った言葉を使って、通信事情に詳しくない中高齢者を騙して、契約をとりつけているのだ。
中には、店番をしていた72歳の女性に7年間・100万円の電話リース契約を結ばせた例もあるのだ。知識がないことに付け込んだ悪質な手口だ。
後から、悪質業者の説明が嘘と気づいても解約できない。その「罠」とは
しかし、こうした悪質な業者に騙されたことが後でわかっても解約できない「罠」があるという。
悪質商法・消費者問題の専門家、エクステージ総合法務事務所・水口結貴行政書士に聞いた。
水口結貴行政書士は、「“特定商取引に関する法律”の場合、契約しているのが中小事業主の場合は、クーリングオフは適用されない、と説明してくれた。
クーリングオフとは、一定期間内なら契約を無条件に解約することができる制度。しかし、個人の場合に限られる。個人事業主や法人の場合は、クーリングオフはできないのだ。つまり、一度契約をすると途中解約はできず、全額を支払わなくてはいけないケースもあるという。
「クーリングオフ」とは、一定期間内なら解約することができる制度のこと。しかし、個人の場合に限られる。
Aさんのように、業務目的で店の名前を使って契約した場合、この制度は適用されない。
つまり一度契約すると解約することができず、全額支払をしない場合がある、ということだ。当然、悪徳業者はこの法律を知っている。
消費者問題に詳しい法律家に聞く、悪質業者に「騙されないコツ」
では、どうすればこうした悪質業者に騙されないですむのか?
水口結貴行政書士は、下記の3点が大事、と教えてくれた。
1. 契約書をよく読むこと
2. 安易に印鑑を押さないこと
3. 一人で判断せず、誰かに相談した上で慎重に考えること
「今の電話機は使えなくなる」、こんなセリフには注意が必要だ。因みにAさんは、代金を支払う前に専門家に相談して「契約無効」の書類を送付した。その後、業者の連絡は一切ないという。