キャッチセールスを繰り返していた業者に、
都が業務停止命令
普段若い女性を狙って、路上で声をかけ化粧品のキャッチセールスを行なっていた会社に、東京都から業務停止命令が出された。その悪質な手口に迫る。
街頭で、「キャッチセールスに声をかけられたことがあるか?」と聞いてみた。
すると、若い女性だとキャッチセールスに声をかけられた人はとても多かった。いずれも「強引だった」と言う。キャッチセールスから離れようとしても、行かせてくれない、と女性は言った。
別の女性は「ネイルの練習をしているから、やらせてください」と声をかけられ、ついていったら、「美顔器や化粧品があるから見ていって」と言われ、次々に高額商品が出てきて、美顔器や化粧品の販売をされてしまったという。
また、別の女性は「エステの体験ができる」というので、行ったところ「モニターになってくれ」と説明され、高額商品を紹介された。このように、若い女性を狙って高額な商品を販売する悪質商法が増えている。
そんな中、東京都は渋谷区の2つの会社に3ヶ月の業務停止命令を出した。
業務停止命令を受けたのは「dolls」と「B`s group」の2社。この2社は、一昨年まで同じ会社だった。業務内容は化粧品の販売やネイルサロンの経営など。
しかし実態は、街頭などで女性に声をかけ、30万円以上する化粧品を販売していた。
被害者の平均年齢は19.8歳、2006年1月から9ヶ月間で約300人の女性が被害にあった。
悪質な、その手口とは…。
不安を煽り、高額商品を買わせる。悪質業者の巧みなトーク
都の発表に基づいて、業者の勧誘シーンを再現してみた。
渋谷駅周辺で、主に10代後半の女性に声をかけ「無料でネイルをやらない?」と誘う。甘い誘い文句に釣られてついていき店舗へ行くと、待っていた女性店員から「ネイルの前のアンケートに答えてください」と言われ、アンケートの一環として肌状態を診断される。
そして「ニキビ・くすみがひどくて40歳くらいの肌だ」、「皮膚にカビが生えるかも」などと不安を煽るような診断結果を言われて、動揺させる。さらに「使っている化粧品が原因」などと言われる。
さらに、「将来、化粧品販売会社を設立するため」、「今、モニターを募集している」と切り出す。
モニター期間は2年間。「1ヶ月、10,000円」の費用で化粧品を使うことができて、「期間中は1回100円で何回でもフェイシャル、ネイル、脱毛のサービスを受けることができる」というもの。
「今、肌に投資しないと肌荒れがひどくなって、皮膚病になるかもしれない」等と、女性心理を巧みについた悪質な勧誘手口と、支払は「モニターになるための会費」であるかのような説明をして、モニターになる決断を迫る。
「化粧品モニターの会費」は嘘。実は貸金業者への返済だった
数日後、再び店舗を訪れると、契約総額が30万円を超える高額なものである事を初めて知らされる。
さらに、すでに決められている支払方法を知らされるのだ。それは「月々10,000円で、払えなければ5,000円でもいい」というもの。申込書に記入すると店舗職員が、どこかへ電話をかけ、途中で電話を変わるように指示される。電話を代わると、相手は何と「貸金業者」だった。そして、貸金業者は「月に1万円の47回払いです。大丈夫ですよね?」と聞いてくる。
モニターの会費と思っていた「月に1万円」の支払は、実は貸金業者への借金返済額だったのだ。30万円以上の化粧品を買わされたうえ、分割払の金利分まで支払うことに…。
その後、悪質なセールスと気づいて解約を申し出ても、「店に来ないと解約できない」とあしらわれてしまう。
勧誘方法に問題があると知りながら、2つの業者と提携していた貸金業者には、東京都消費者常例に基づく、是正勧告が出された。何と、この貸金業者の貸付金の8割が2つの業者と関連していた。
このように、悪質なセールスを手助けする貸金業者がここ数年で増えているという。その理由の1つに、貸し付ける「目的」を従来型の「フリー」だけでなく、一定の物品を販売する業者と提携した方が貸出額が伸びるから、という。こうした元は信販会社やクレジット会社がやっていた分野にも、貸金業者が進出してきていて、悪質業者との結びつきが指摘されている。
消費者問題の専門家・水口結貴行政書士に対策を聞いた
悪質なセールスの被害者にならないためには、どうすればいいのか?
悪質商法の専門家、エクステージ総合法務事務所・水口結貴行政書士によれば、「一度、だまされてしまうと同じような手口にひっかかる人が多い」という。
その上で、下記をアドバイスしてくれた。
1)納得がいかない契約には、はっきり「ノー」と言って断る。
2)その場から立ち去る・帰る
また「何より、独りで悩まないことが大事」とアドバイスをしてくれたほか、消費者センターのような国の機関や法律専門家へ相談するなど、泣き寝入りしないことが1番大事だ、と教えてくれた。
街で若い女性の声を聞いてみると、キャッチセールスについて行ってしまう人は、やはり肌に何かしらのトラブルを抱えていた。そういう意味で「人の弱みに付け込む」ビジネスである、とも言えるだろう。
今回のケースは、様々な点で「特定商取引法」に違反している。得に10代なら、まだ自分一人で契約といった大事な判断をすることは難しいだろう。一人で、その場で決めてしまわず一度持ち帰って、家族や信頼できる大人に相談する、ということもしてほしい。