チャット、ゲーム、占い、通販…。危険はとなりあわせ
私は、アツくなる女
周りが全く見えないくらい信じ込んで、詐欺まがいの悪徳商法に引っかかってしまう人が後を絶たない。そのほかにも、色々なことにハマってしまう人、アツくなってしまう人がいます。
もちろん熱中するのは自由でも、思わぬ落とし穴があることも…。
「1口100万円で、金を預けると3ヶ月ごとに9万円の配当を払う」、「配当によっては“円天”(会社独自の電子マネー)を支給して、円天市場の会員限定のバザー会場で日用品と交換できる」-。
こんな触れ込みで勧誘し、全国の会員5万人から総額1000億円もの金を集めていた健康食品会社(東京都・新宿)「L&G」が、10月初旬に一斉捜索された。被害者には高齢者や主婦も多く含まれていたという。
「近年、家計が苦しいから少しでも得になることをしたい、副業やインターネットでお小遣いを稼ぎたいという主婦が増えています。マルチ商法(連鎖販売取引)だけでなく、最近は“アフェリエイト”の相談も増えています。自分のホームページにリンクを貼って、商品が売れると報酬がもらえる仕組みですが、詐欺まがいの業者もいるようで、“お金を取られたので解約したい”という相談も多くなっています」。
こう話すのは、エクステージ総合法務事務所の代表行政書士・水口結貴さんだ。水口結貴さんは、「クーリングオフ・ネット」を主宰し、全国から寄せられる数多くの相談に応じている。
不況の影響もあってか、「収入を少しでも増やしたいと思っている女性は多く、お小遣い系の相談の約6割が女性。しかも同じ人が2度、3度と繰り返し騙されてしまうケースも多い」と説明してくれた。
子ども用ゲームにのめり込み、貯金が半分に
深夜の通販チャンネルにハマってしまった静岡県の主婦、Aさん(46才)。「多いときで月に30万円くらい使うこともある」という。前に欲しかった商品が売り切れたことがあり、それをすごく後悔したのがハマったきっかけとか。
一時期、「買い物依存症」が注目されたが、こうした通販専門テレビ番組やインターネットの普及は、ますます買い物にハマる女性を増やしているようだ。
また、意外にも「ゲーム」にハマる女性も多かった。京都に住む主婦のBさん(38才)は、子ども用のカードゲームにハマってしまい、毎日のように近所のスーパーやゲームセンターに通っている。元々は子どもに誘われて始めたそうだが、「子どものためにかわいいカードを取って喜ばせようと思ったら、自分が夢中になってしまい…」と話す。気が付けば1ヶ月で3万円を使ったこともあった、という。コツコツ内職で貯めた貯金の半分をすでにこのゲームにつぎ込んでしまったそうだ。
ほかにも、こうした「アツい」女性たちが大勢いる。
「家族が寝た後に携帯用のゲームをやらないと気がすまない」。「嫌なことも忘れられる。夫の浮気も父が亡くなったときも、ゲームをやって忘れました。そうするうちに手放せなくなって…」(主婦・44才)
「チャット」にハマってしまったのが神奈川県に住む主婦Cさんだ。彼女はバツイチ。離婚後、彼女はたとえようもない孤独感に襲われた。深夜の寂しさを紛らわすため、離婚した人限定のチャットルームに入るようになった。「参加している人は、本当にみんな優しくて、安らぐ言葉もかけてくれ…」と毎晩、チャットをするようになった。ところが、朝までチャットを続けて移写いるので、パートも休みがちになり、結局クビになってしまった。「子どもの養育費をもらっているだけなので、無職になり生活が厳しいです。ここまでにならなければ、自分の状態に気が付かなかったのか…」と後悔している様子だった。
心療内科医によれば、「女性は男性に比べて、世界が狭くなる場合が多い」と指摘する。さらに「家の中で一人だったりすると、客観的に自分を見ることができず、気がつくと(ハマる行為が)加速してしまう」そうだ。
逆に、友人や職場の同僚など、親しい他人がバランスよくいる人は、行き過ぎる前に気づいたり、自分を客観的に見ることができるという。
誰かが、リセットしてくれる…
何かにハマったとしても「人に迷惑をかけない」分にはかまわないだろう。しかし、中にはトラブルに発展してしまうケースもある。
Dさんは「引越し」にハマっている。原因は「風水」だ。何か悪いことがあると「風水的にいけないから」で、夫とのケンカも「風水のせい」になってしまう。独身時代に8回、結婚後に3回。この引越しで毎回100万近い出費になってしまう。そのためDさんはスナックでアルバイトをするようになり、それが原因で夫との間にまたトラブルが起きている。
さらに深い罠が「悪徳商法」だ。前出の水口結貴行政書士は、「重ねて何度もだまされてしまう人は、例えばキレイになりたい、お金が欲しいという強い気持ちを前々から持っている。それが消えないから、一度だまされたとしても『今度こそ、大丈夫』と思ったり、前の損を取り戻そうとして、また騙されてしまうのです」と語る。
しかも女性がハマっていく背後には、友人や親戚、同僚など信頼関係のある人によって誘われることも多く、断り切れないのも被害を大きくしていく。
こういった女性の根底には共通点があると、心療内科医は指摘する。
まず、現状に不満があり「満たされていない、幸せでない」と感じていること。
次に、王子様症候群のように「いつか誰かに人生や運命を変えてもらいたい」と無意識に思っていること、だそうだ。
だが、こうした他力本願的な願いは別いして、夢中になれることがあることは悪いことではない。逆に「ハマった」ことから、生きがいを見つけたり、友人が増えたり、おしゃれになったり、という効果も期待できるだろう。誰でも一つや二つは「ハマりもの」を持っている。後は「ハマった」熱狂が冷めた後、とんでもない状況になっていた、ということはないように気を付けておきたい。