私、ダマされちゃいました(詐欺)
「詐欺」は決して人ごとではない。平穏な生活を脅かす、詐欺被害が急増している。
平成17年度の詐欺犯罪の検挙人数は1万1648人。10年前より3000人も増加しており、毎年増加の一途をたどっている。
悪質商法の被害者に聞いた! 驚きの詐欺の手口
引越をねらって、植木を売りつける
Aさんは、現在の住居に引っ越してきた当日、突然「隣の住人」を名乗る老婆の訪問を受けた。
Aさんはこの言葉を信じて、老婆を家に上げる。
近所の様子等を親切に教えてくれる老婆を「いろいろ様子が聞けて助かるかも…」と思ったという。
話の途中で老婆は突然、鉢植の植木を取り出し「この木に実がなると幸せになる、不思議な木」と説明した。さらに「引越をしてきた人に、この木を譲って幸せのおすそわけをしている」と続ける。
Aさんが、そんな大切なものを無料でいただけないと言うと、老婆は「では、気持ちだけ頂く」と言い、なんと「1万円」と言った。Aさんは、高いと思ったものの、自分だけ払わず「ケチ」と思われたら嫌だな…と思い、言われるままにお金を払った。帰ってきた夫に、この件を咎められたAさんは隣の家に向かうと、そこには「空室」の張り紙が。反対隣には、老婆が口にした名前とは違う表札。Aさんは、マンションの他の階や近所を探したが、あの老婆は見つからなった。さらに、後日、ホームセンターで1万円で購入した植木と同じ物が数百円で売られており、店員に確認しても特に謂れ等は無いという。
悪徳商法問題に詳しい、エクステージ総合法務事務所・水口結貴行政書士は、「訪問販売の一種と考えれば、本来は契約書を発行しなければならず、クーリングオフも8日間は可能」と言う。しかし、「このように相手の居所も不明だと、解約も難しい」と指摘した。さらに「詐欺にあたるかどうかは別としても、訪問販売は虚偽(嘘)を言ってはならないと規定されている」ので、このケースの場合、そもそも老婆が「隣の住人」と嘘を言っていることは問題と指摘する。
主婦を狙った、折込求人広告にも悪質業者が
Bさんは、夫と共働き。数年前に家を新築し、必死でローンを返済していた。しかし、突然、姑が脳梗塞で倒れ、自宅介護のため仕事を辞めざるをえなくなる。共働きでギリギリだった家計はあっと言う間に苦しい状況に。そんな時、Bさんは「家でできる仕事」・「安定した収入」等と書かれた新聞の折込チラシを見つける。夫に相談すると赦してくれたため、Bさんはこの仕事(在宅校正)に応募することに。1週間後には、業者から在宅ワークの資料が届き、中には「トライアル」用の校正物が。これならできると思ったそうだ。しかし、同封の手紙には、「正式登録の前に『信任登録料』として4万円いただきます」の文面。Bさんは、最初にお金を払うことに抵抗を感じたものの、このお金を払えば「必ず仕事がもらえる」、「内職をするためには登録をしなければいけないのか」と思い、払ってしまった。そして、1週間後、業者から書類が届くとそこには「不合格」の文字。Bさんがトライアルの仕事と思っていたものが試験だったのだ。
さらに別の書類には「あなたは推薦されました!」とあり、「試験の結果が僅差のため、再度、登録料を払えば合格できる」と記載されていた。仕事がしたかったBさんは、再び4万円を支払った。さらに1週間後、業者から手紙がBさんに届くが、そこにはまたも「不合格」の文字。Bさんは、途方にくれてしまう。しかし、どんな業者が分からず恐怖心もあったため、業者に問い合わせることはできなかった。
エクステージ総合法務事務所・水口結貴行政書士は「典型的な内職商法」と指摘する。
宛名書き、データ入力、ホームページ作成等、種類は色々あるが、クーリングオフ期間は20日間と長めのため、不審な点があればその間にクーリングオフをすれば問題無いと教えてくれた。さらに「仕事をする時に、最初にお金を要求する所は気をつける必要がある。99%はインチキと思った方が」と注意点を教えてくれた。
「美しくなりたくい」女性の願望につけ込む、悪質エステ
Cさんは、太り気味を気にしていたのと、痩せて恋人を作りたいという願いがあった。そんなある日、路上で見た目の良い男性から声をかけられ、応じた。男は「ここでは書きにくいので…」とCさんを喫茶店へ連れて行く。喫茶店には、女が待っていて、男性はすぐに外へ。
世間話の後、女は「エステでやせた」とCさんに告げ、「Cさんもエステに通えばきれいになれる」等と説明を続けた。さらに自分は今、そのエステ店で働いていることやパンフレットを見せ、「最新式の脂肪を燃やす機械」があり、「日本で置いているのはうちだけ」と言う。そして「一度、お店に来てみない?」とCさんをエステに誘った。料金を気にするCさんに「今ならキャンペーン中で、入会金は無料」と女は続けた。しかもキャンペーンは今日まで、と話し、迷うCさんを「絶対にきれいになるから」等と勧誘を続けた。Cさんは、その女が綺麗だったため「こうなれるなら…」と言われるがままに、エステの予約を入れてしまう。そして、Cさんは、1週間後エステの体験のため店舗を訪れた。
そしてCさんは「脂肪を燃焼させる効果がある」との機械で施術を受けた。施術中も店員の女は「これでセルライトが消えていく」、「くびれが復活する」等と効果を言う。体験は30分程で終了。その後、別室で店員の女はCさんに「あなただけに特別」と言い、施術で使った機械を家庭用に改良したという機械の購入を勧めてきた。価格はなんと50万円。「分割にすれば、月々たったの1万円」と店員はあたかも安い物であるかように勧誘を続けた。高額なためCさんが購入をためらうと店員は「この機械で絶対に美しくなるから」などと効果を言い続け、Cさんは「月に1万円なら…」と購入を決心。その場で契約書も書いてしまった。
その帰り道、Cさんは自分に路上で声をかけてきた男が、同じように「アンケート」と称して、別の女性に声をかけている場面を目撃。それによってCさんは、「ああ、そうやって色々な人にエステの機械を買わせているんだ!」と気づいたのだ。早速、Cさんはエステ業者の店舗に戻り解約を申し出るが、店員は「できない」と言う。Cさんが「クーリングオフできるはず」と言っても「一度、契約したものは取り消せない」の一点張り。Cさんは「解約したい」と1時間に渡り食い下がって、ようやく解約できたと言う。
「女性なら、誰でも綺麗になりたいと思っているのに、そのコンプレックスを利用して騙すなんてひどい」とCさんは続けた。
水口結貴行政書士は、「詐欺というより、キャッチセールス、アポイントメントセールスに近い」と言う。「キャッチセールスであれば、もちろんクーリングオフができるが、そもそも、販売目的を告げていないことが問題」と指摘する。クーリングオフは全ての商品が対象ではなく、販売方法によってクーリングオフが可能な物、不可能な物に分かれている。キャッチセールスやCさんのような件は多いと教えてくれた。
後を絶たない振り込め詐欺の被害。その最新手口とは
振り込め先の最新手口として「地デジ詐欺」が急増している。2011年7月に地上デジタル放送へ移行することに便乗している。機械に対する知識が弱い高齢者をねらった新たな手口だ。「総務省」を騙り、高齢者宅へ「デジタル放送接続料金請求書」と題した文書を送り、デジタル放送移行に伴ってお金が必要と、数万円を請求する。また、文書だけでなく、電話もかけ「このままにしておくと、数年後にテレビが見られなくなる」、「すべての世帯に地上波デジタル放送を送るための設備に膨大な費用がかかるため、皆様に負担していただいている」等と言って、お金を振り込ませる。
このように、その時々の時勢を取り込みながら、新しい詐欺の手口を生み出していくのが詐欺師だ。
「他人ごと」ではなく、詐欺の罠は日常の中に潜んでいる。どんな小さなことでも不審な事があれば、すぐに法律専門家に相談するのが良い。