不景気を背景に急増する「副業トラブル」
その実態に迫った
北関東に住む40代の女性。夫と二人の子どもと四人暮らし。不景気のあおりを受け、夫が残業ができなくなり、給料が月8万円も減ったという。そのため「自分が何とか、お金を作れないか」と思った。すでに週3回、パートで働いているが、住宅ローンや子どもの学資保険が重くのしかかる。女性は、自宅でできる副業を探し始めた。
ダイレクトメールには、「半永久的な収入が得られる」と…
「パソコンを使って、簡単な作業で副収入を得られる」という情報(ブログ)を見つけた女性。そのブログを書いていた人物は副業で、月に800万円から1000万円の収入があるという。さらに「500%稼げる」という記述もあった。
女性はこのブログの管理者に「どの副業がいいか?」という相談を持ちかけ、数回やり取りをしたという。女性はこの人物を「信用しきっていた」と言い、相手は副業の魅力や詐欺にあわないための注意点など親身に相談に乗ってくれた。
そして、女性に副業紹介メールが届いた。仕事内容は、女性自身の個人情報を入力するというもの。すると、女性の元にダイレクトメールが次々と送られてくる、という。入会して一度、9800円を支払えば、その後は毎月5000円が半永久的に口座に入金される、という。
「月に5000円でも、これだけのことで入ってくるんだ」と、女性は「楽だな」と思った、と言った。そして女性は、その日のうちに入会。登録料として9800円を振り込んだ。
一度は入金して安心させ、高額をだまし取る手口
そして数日後、女性の下に「会員様限定」というメールが届いた。女性は「限定」という文字と「2万5千円が振り込まれる」、「5万円が振り込まれる」という金額に魅力を感じて応募。10万円を支払った。
「5000円の入金もあったので、大丈夫だろうと」思った、と女性は言う。
確かに、9800円を支払って、5000円の入金はあった。しかし、10万円を支払ったが5万円の入金はなかった。
女性は、何度も「支払がない」というメールを送ったが、業者は「しばらくお待ちください」と繰り返すばかり。やがて、その返答も来なくなった。
「腹が立つ」、「許せない。お金を全額返してほしい」と話す女性。
最初に親切を装って相手に接近。その後に耳よりな儲け話で勧誘する手口。問題点を消費者問題の専門家に聞いた。
消費者問題の専門家が語る、問題点とは
悪質商法問題の専門家、エクステージ総合法務事務所 代表行政書士・水口結貴さんによれば、「初めは誰でも半信半疑の気持ちがある。だから、最初に1回だけ、お金を振り込む。そこで、相手が『大丈夫かな』と信用したところに、さらに請求する。“詐欺”や“だまし”のよくあるパターンです」、という説明だった。
また国民生活センターの説明では、最近はインターネットを使った副業を紹介するという相談が多く、不況の影響で内職商法に関するトラブルの相談は急増しているという。
「パチンコで稼げる」という説明に騙された人も
別の男性の場合「パチンコで日払で、月に3万円から19万円の収入になる」と言われ、副業の募集に応募した。その内容はパチンコファンには、魅力的で巧妙なものだったが、結局10万円の被害を受けた。
この男性が問題の業者に連絡をとる。
「上司は不在」と言い逃れようとする業者に男性が食い下がると、「しつこいんだよ!ホントに! 不在だって言ってんだろ!」と怒鳴る業者。
問題の業者は、どの担当者が出ても「上司に相談する」の一点張りで、話をしようとしない。思い余って、男性が「警察に言いますよ」と発言すると業者は「そういうことを言うのか。警察に話す、というなら仕方ないですね」と言い、一方的に電話を切った。
電話で話しても進展がない。残る手がかりは契約書に書かれた業者の住所だ。それは都内のあるビルの4階だった。番組スタッフは男性と共にそのビルへと向かった。ビルの中に入ってみる。果たして、問題の業者やいるのかー。
しかし、数分後、番組スタッフと共にビルを出てきた男性は「電話が通じたので、住所に居るかと思っていたが、私書箱になっていた」と言った。
そこにあったのは、民間私書箱を運営する会社だった。そして、問題の業者は利用料を滞納し、契約を解除されていた。
そこで、男性は再び業者に電話をした。男性が話し始めるなり「話があるなら、弁護士をつけろ」と言う業者。「話を聞いてほしい」と男性が食い下がるが、業者は「話を聞く理由もないし、時間もない」と一方的に言う。
そこで男性が「住所を訪ねて行ったが、会社が存在しない」と言うと、業者は電話を切った。
そこで、男性に代わり番組スタッフが再び電話をかける。番組名を名乗り、取材をしていることを告げると業者は、不審そうに「取材をしている?」と言い、住所の件を訪ねたところで、また電話を切った。その後、何度電話をしてもつながることはなかった。男性はこの件を警察に相談し、被害届を出す予定だという。
被害が急増している副業トラブル
エクステージ総合法務事務所・水口結貴行政書士は警鐘を鳴らす。
「当たり前のことだが、簡単に、楽をして儲かる話は本当にない。これは気を付けないといけない」。
「当然」と思っていても、いざその時になると甘い言葉に騙されてしまうのが人の常。不景気が続く限り、悪徳業者も無くならないし、また新しい手口で騙そうと近づいてくる。気を付けたいものだ。