女性被害者急増
悪徳内職商法に騙されるな
お不景気が続く中、「この通信教育を受ければ、在宅での仕事を紹介する」と言って高額な教材を買わせ、実際には仕事をほとんど紹介しない「内職商法」が急増している。相談・トラブルの件数は訪問販売、通信販売に次ぐという。
その手口を、消費者問題を数多く手掛けている、エクステージ総合法務事務所・代表の水口結貴行政書士に聞いた。
最近の主婦をねらった悪質商法は「パソコン」がブームに
昔からあるチラシ配布や宛名書、医療事務などに代わり、昨今の内職商法はパソコンを利用したものが圧倒的に多い。子どもが小さくて外に出られない主婦を狙った、悪質な犯罪だ。
「内職商法は、騙されたと分かったときは、契約から一年以上経っている場合が多く、その時には契約した会社が無い(倒産している、逃げて行方がわからないなど)ケースが多い。また、業者は次々と会社をつぶしては名前を変えて同様の商売をするので、被害者が個人で調べても、実態がなかなかつかみにくいのです」。
こう指摘するのは、内職商法をはじめ悪徳商法の解約手続代行を数多く手がけるエクステージ総合法務事務所の代表行政書士 水口結貴さんだ。実際、平成14(2002)年の消費者相談件数14,407件のうち、内職商法に関する相談は12.9%に上っている。また、内職商法では別会社が教材販売と仕事あっせんを行うので、仕事の紹介がされなくても教材販売会社は責任逃れができる仕組みになっている。
「仕事」をエサに悪質商法へ勧誘されるのは、男性も同じ
女性被害者はチラシや求人広告がきっかけになることが多いが、男性被害者は昇格やヘッドハンティングなどがきかっけになることが多いという。
業者は『取引先の重役があなたを推薦してきた。この資格をとれば、あなたはスキルアップでき、重役が特別な仕事を推薦してくれると言っている。これはあくまでも内密な話なので、他人には話さないように』と言って誘う」と、水口結貴さんは、その手口を開設する。もちろん、全くの嘘だが欲が出たり、電話を早く切りたい一心から「資料を自宅へ送ってほしい」と言ってしまう。
水口結貴さんによると、「郵送された資料には、契約用紙も入っていて、その後の電話で徐々に断れないような状況にまで話を持っていかれてしまうのです」ということだった。
水口さんの事務所には、50代の自動車ディーラーからの相談もあった。「営業のプロですら騙されるのですから、相手(悪徳業者)の手口がいかに巧妙かが、わかります」と、教えてくれた。
泣き寝入りは禁物。
ローンの支払停止ができる場合も。
しかし、全て諦めて泣き寝入りしてはいけない。既払金を取り戻すのは難しいが、ローンの支払を停止することは可能だからだ。嘘(必ず仕事を紹介する、仕事の報酬でローンは払えるから、自己負担は無い等)を言われて契約したり、契約の重要事項に勘違い(錯誤)があれば、それを理由に相手業者に契約解除を要求できる。そして、業者と契約解除の話し合いが決着するまでは、ローンについては「支払停止抗弁」といって、支払を止めることができる。
業者に問題があるとわかったら、まずは専門家などへ相談をして、契約解除手続やローンの支払停止抗弁手続を進める方がいいだろう。
騙しの手口は巧妙になっている。できるだけ早く専門家に相談を
「マスコミなどで内職商法が取り上げられるようになってから、求人広告を掲載する側も怪しい広告は掲載しないようになっています。それで折込広告をきっかけにする被害は減ってきましたが、今度や電話や電子メールを使った勧誘が増えています。しかも、宣伝文句も法律の網の目をくぐるように、どんどん巧妙になっています。内職商法の会社は減っているわけではないので、騙されないように警戒が必要です」と、水口結貴さんは教えてくれた。
事情があって外で働くことができず「家で仕事をしたい」というニーズがある限り、内職商法は無くならない。それどころか「騙しのテクニック」は日々進化して、法の網をくぐり、被害者を狙っている。
契約する前に、その会社名で被害者が出ていないか調べてみたり、途中で「おかしい」と思うことがあれば、すぐに専門家や消費者センターなどに相談するようにしたい。