「宝石」「ネット」「超美人」に要注意
「危ない」結婚サービス
結婚相手紹介サービスでトラブルが続いている。
退会解約料、強引な勧誘だけでなく、出会いを求める心に付け込んだ悪質商法も横行。結婚難の時代、生涯のパートナーに出会う前に、落とし穴に落ちないように…。
サトルさん(仮名)は39才、会社員だが周囲に花嫁候補は見当たらず、40の大台を前に結婚を焦っていた。「これでは、結婚相談所に行くしかない」と、インターネットで検索して、ある会社に資料請求をした。すると、業者からすぐに「無料相談に来て欲しい」との電話をもらった。気をよくしたサトルさんが相談所に出向くと、「カウンセラー」と称する女性が、「結婚相手は必ず見つかりますよ」、「40才になると結婚相手を見つけるのも難しくなるので、入会するなら今しかない」と言う。
サトルさんは、年齢を考えてその場で契約。入会金や情報料、会費などを併せて約40万円なった。しかし、入会直後に見せられた女性プロフィール30人の中から、数人にお見合いを申し込んだが、全て断れてしまった。
サトルさんは不信感を感じ解約を申し出るが、解約料として20万円を請求された。「高すぎる」と抗議すると業者は「すでに情報提供しているから、その分は返金できない」と言う。業者の言い分は「女性20人分の写真を見た」ことが「情報提供」というのだ。結局、サトルさんは一度も女性と出会うこともなく、お金を無駄にしてしまった。
入会直後の「大サービス」
実は、サトルさんのようなケースは珍しくない、という。結婚相手紹介サービスをめぐるトラブルが増加している。国民生活センターによれば、2003年の相談は2,432件と急増している。2004年1月に特定商取引法が改正され、結婚相手紹介サービスも規制対象になった。(※契約期間が2ヶ月、金額が5万円を超えるもの)しかし、国民生活センターに寄せられる相談件数はさほど変わらない、という。さらに「規制対象になってからは『解約料が高い』という相談が増えている」、「入会直後に多くの情報提供をすることで、解約料が高くなるように設定している」と説明してくれた。
「わぁ、ステキな指輪!」 高額な指輪を購入後、「彼女」からの連絡は途絶えた
さらに悪質な例を紹介しよう。自営業のジュンイチさん(仮名)は37才。自宅に届いた結婚サービス業者からのパンフレットを見て、業者を訪問した。業者の女性相談員は「女性会員はみんな美人です」と入会を薦める。ジュンイチさんが迷っていると、今日お見合い予定だった会員さんがいる、突然相手からキャンセルされて、隣の部屋にいるから会ってみませんか?と言う。
そして隣の部屋に行ってみると、そこには魅力的な女性が居た。一目ぼれしたジュンイチさんは即、入会を決めた。そして「交際」も無事にスタートした。2週間後、相談員から「経過を報告してください」との連絡があり、「彼女」と一緒に紹介サービス会社へ行くジュンイチさん。順調な交際ぶりを報告すると相談員は突然、奥の部屋からパンフレットを持ち出してきた。それは宝石や装飾品のカタログだった。そして「結婚する時には必ず必要になりますよ」と、80万円のダイヤの指輪を薦めてきた。断ろうとしたとき、「わぁ、ステキな指輪!」と彼女が言う。
-ジュンイチさんは、その場で購入契約をしてしまった。
しかし指輪購入後、「彼女」からの連絡が急に途絶える。相談員に聞いても「彼女」の行方はわからない。
ジュンイチさんは、中途解約を申し入れるが、返金されたのは会費の数千円だけだった。80万円の指輪は、8日間のクーリングオフ期間が過ぎているという理由で返品(解約)できず、お金も戻ってこなかった。
履歴を偽った「サクラ」も多く存在する
「サクラ」は何も男性相手に限った話でははい。高収入・高学歴のヤスコさん(仮名・34才)は男性に求める条件が厳しかった。周囲には「対象外」の男性しかいない。そんなとき「高年収男性を紹介」というキャッチフレーズの結婚相手紹介サービスをネットで見つける。
入会金や登録料、2年間分の会費などを合わせると約50万円にもなる。しかし「高収入の人に出会えるなら」と入会した。ところが、毎週10人ほどにお見合いを申し込んでも全て断られる。業者主催のパーティーに参加しようとしたが、いつも「定員になり締切ました」で参加できない。
入会から3ヶ月が過ぎたが、誰にも出会えなかった。ヤスコさんは担当者に相談したが「男性は20代の若い女性を好みますから」と屈辱的な返事をしてきた。しかも、後でわかったことだが、業者サイトに公開されていた男性会員はエグゼクティブどころか、フリーターたちだった。
じかし、自宅住所や会社名などの個人情報を知られている業者から、何かされるのを恐れたヤスコさんは、泣き寝入りしてしまった。
「出会い系」から次々、参入
こうした結婚相手紹介サービスは「デート商法」につながるところがある。デート商法では、サクラの存在や宝石販売はつきものだ。そして、名簿業者、サクラ集め、物品販売など、業種をこえて横のつながりがある、という。デート商法に比べると「結婚」というはっきりした目的があるだけに、より騙しやすいという。
さらにインターネットを利用した手口が増えているのも特徴の1つだ。悪質商法に詳しいエクステージ総合法務事務所代表、水口結貴行政書士によれば「悪質な出会い系サイト業者が、結婚相手紹介ビジネスに進出しているケースが多い」と指摘する。中には、小規模な業者であれば、代表者が自分自身を「サクラ」として男女を問わず「交際相手」たちとメールのやり取りをしている所もある、ということだ。「結婚サービス業は設備投資が必要なくて誰でもすぐに始められる。だから悪質業者が参入しやすい」と教えてくれた。
結婚紹介業者で作る団体では自主規制基準を設けているところもあるが、大半は野放し状態だ。悪質業者を見抜くポイントとしては、例えば、長時間に渡って拘束して契約を急がせたり、連絡先が携帯電話やメールだけになっている業者などが挙げられるだろう。そのほか、水口結貴行政書士からは「『すぐに相手が見つかる』などと、良いことばかりを説明する業者や、指輪など商品購入を勧める業者には注意が必要」とアドバイスがあった。大事な結婚への夢を食い物にされないために気をつけて業者を選びたい。